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6 官能の宴(2)

「ピアニストはまだ、こういう事を恥ずかしいと思って嫌うわけだ」
父の目が気になるとは言えない僕は、黙って下を向いていた。まるで学校で先生に叱られているような気がしてくるが、僕はこれまで教師に叱られたことはない。座敷へと続く、この三畳ほどのアプローチも十分ヒーターが効いていたが、剥き出しになった両足で微かに、冷たく風が立った。反射的に顔を上げると、正面にケープを脱ぎ捨てた彼女の裸体があった。
またすぐ下を向き、目に焼き付いたシーンを反芻した。始めて見る彼女の裸身だった。いや、女性の裸を、写真や映画以外で見るのが、つまり、生のヌードは初めてだった。

本当に、いや、今度こそ本当に僕は困った。いつまでも下を向いているわけにいかないし、彼女が黙って立ち去ってくれるはずもない。大げさなようだけど、僕の責任と人格で進退を決めなければならないのだ。

それにしても、下を向いたまま目をつぶると、彼女の裸身の美しさばかりが浮かんで来る。
“均整のとれた曲線が、立体として表出している”多分、美術のテストの回答ならこれで満点のはずだ。これまで気付かなかったが、ヌードの彼女はビデオで見た「パリス・テキサス」のナスターシャ・キンスキーみたいだった。でも、あの映画にヌードはない。それほど彼女が素敵ってことなのかと思い、目を上げればまた最高の裸身を見られると思った途端、Mの鋭い声が飛んだ。

「私の身体を見るのも恥ずかしいの。あなたに見てもらえない、私の恥ずかしさも知ったがいいわ。ピアニストはもう立派な大人の男なのだから。女に子供を産ます能力に見合った人格と責任を持ったがいいわ。説教する訳じゃあないけど、女はね。子供が産めるようになったときから、最高の男を見分けようと努力しているのよ。さあ、顔を上げて、目を開いて、私を見なさい。あなたは私がいいと思った男だって事に、誇りを持っていいのよ」

「はい」と大きな声で答え、さっと顔を上げ、目を開いた。
彼女の顔は楽しそうに微笑んでいて、その裸身はやはり最高に美しかった。ただ、デルタで燃えるように天を突く黒々とした陰毛だけが、違和感をともなって僕を脅迫した。
素っ裸の彼女が肌が触れるほどに近付き、濡れネズミの僕を裸にする。僕は彼女の裸身を目で追いながら、なすがままになる。きびきびと動く裸身は装っていたときと比べられないほどに美しい。

Mと同様、彼女の手で素っ裸にされた僕の身体を、彼女が見る。僕は全身を真っ赤にさせ、十分すぎるほどに勃起したペニスを意識し、彼女の陰毛に感じた違和感を自分の陰毛に感じた。恐らく僕は大人になりきっていないと、そのとき感じ、幼いときに彼女と、これまでしたことはない、お医者さんごっこをしたかったなどと思い、よけい肌を赤く染めペニスを硬くさせていたのだ。

「ピアニストはいつも元気ね」
呟くように言った彼女は僕を抱いた。初めて感じる素肌と素肌の触れ合いのすばらしさは、僕にまったく新しい地平を見せてくれた。冗談ではなく僕は、このまま世界が終わりになってもいいとさえ思ったのだ。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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