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3 陶芸屋(3)

思いもかけぬ事態にあっけにとられていた陶芸屋も、修太の泣き声で我に返った。
サングラスで表情を隠していたが、恩師の寺で会った女に間違いなかった。
「わざわざ、俺の息子をいじめに来たのか」
「いじめたわけではないわ。しつけてやっただけよ。私はわざわざ、あなたに会いに来たの。あの息子は礼儀知らずだわ。しつけが必要よ」
「分かった。でも、自分の子供の顔を張られて、黙っているわけにはいかない」
「じゃあ、私の顔を張ったら」
Mは黒いブーツを脱いで、ろくろの前に座ったままの陶芸屋の前に進んだ。

「確かMと言ったね。あんたも十分すぎるほど礼儀知らずだ」
「名前を覚えていてくれて光栄だわ。あなたも私をしつけてみる」
陶芸屋の顔を見下ろしたMが、大きく胸を張って挑戦的に言った。
黒の長いコートからのぞいた足は素足だった。白く形の良い足先が悩ましく、陶芸屋の目の前で息づいている。肌の滑らかさは、毎日こねる愛用の粘土以上だと思われた。品良く揃った両足の指がかわいらしい。その持ち主が「私をしつけて」と誘うように言ったのだ。
見る間に陶芸屋の頬が赤く染まっていく。Mはしばらく間を置いてから、低い声で言った。

「良くしつけるには、お仕置きが必要なのよ。私のしつけが間違っていたのなら、私がお仕置きされてもいいわ」
「いや、間違っていたとは言っていない。唐突な訪問にびっくりしているだけだ」
「迷惑だというのね」
曖昧にうなずく陶芸屋の態度に、思わずMの口元がほころぶ。もう、思いのままに運べるはずだった。
「私の目を見て」
ほころんだ口元を意識して締め付け、冷たい口調でMが言った。

上に向けられた陶芸屋の視線を、Mの目がじっと捉える。しっかりと開かれた陶芸屋の瞳の中に、狂おしく燃え盛る炎を認めた。Mは大きくうなずいてから静かに話し始める。
「私は、あなたに迷惑をかけたのだから、あなたに罰してもらわなければならないわ。寺で会ったときから私はそれを望んだし、あなたも望んでいたと思うの。さあ、私の身体を良く見て」
患者に病状を告知する医師のように言い聞かせ、身にまとったコートを脱ぎ捨てた。

黒いコートが床に落ち、真っ白なMの身体が陶芸屋の目を打った。素っ裸だった。美しい裸身に黒い麻縄が縦横に食い込んでいる。
じっと、食い入るように裸身を見つめる陶芸屋の瞳の中で、燃え盛る熱い炎が陶然と広がっていった。
Mの裸身を走る黒い麻縄は、ほっそりしたうなじの両側から胸元に延び、豊かな両の乳房を菱形に囲んで、ウエストを二巻きした縄目に結ばれていた。僅かに上を向いたピンク色の二つの乳首が、陶芸屋の視線を挑発して揺れる。ウエストの中央から二条、股間に延びた縄が黒々とした陰毛の中に分け入っていた。

「どうぞ罰してください」
Mの声に促されて、ぎこちなく立ち上がった陶芸屋は、よろけるように裸身にすがりついた。
「陽子っ」
喘ぐ声で言った陶芸屋の頬にビシッと、身体を引いたMの平手打ちが飛んだ。
「私は陽子さんではないわ」
Mの大声が陶芸屋の耳を打った。
「悪かった。許してくれ。こうして縛られた陽子の姿を、どれほど夢見たか分からないくらいなんだ」
「私はM。私を縛って。そして、罰してください」
優しく答えたMは、レイバンのサングラスを外し、燃える目で陶芸屋の瞳を見つめた。オレンジ色のガラスの陰から現れた黒い瞳が、陶芸屋を誘ってきらめく。いっとき陶芸屋と視線を絡ませた後、Mは静かに背を向ける。両手を後ろに回し、高々と両手首を背中で交差した。

「本当に縛っていいのだろうか」
当惑した陶芸屋の掠れ声が、背中で響いた。
「高手小手に厳しく縛ってください。ほとんど自分で縛って来てしまいましたが、お望みなら縛り直してください」
裸身を戒めた縄目は陶芸屋が思い描いていたとおりだった。後は、自由な両手を緊縛するだけだ。
おずおずとした手つきで陶芸屋は、首の後ろで束ねられていた縄尻を解いて長く延ばした。
背中で交差した両手首を陶芸屋が縛り上げる。厳しく後ろ手を縛った縄を首縄に通し、両の二の腕を縛した後、腰縄で縄止めした。
菱縄後手縛りに緊縛されたMは、縄目を確かめるように小さく肩を揺すってから振り返り、膝を折って正座した。上手な縛りだった。

肩で大きく息をついた陶芸屋の目の前に、素っ裸のまま後ろ手に縛られて正座する豊かな裸身があった。
その姿は、楚々とした中に凛とした風情が漂う、高度に洗練された白磁の陶風さえ感じさせた。
「あなたの好きなように罰してください」
Mの声が遠のき、陶芸屋は別れた陽子の姿をMの裸身に重ねてしまっていた。

 ★今年1年間、当ブログをお読みいただきありがとうございました。2011年も宜しくお付き合い下さい。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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