「ああ、お願いだから、あなたの性器を舐めさせてください。もし叶うことなら私を、あなたの快楽のために奉仕させながら責め苛んでください。お願いします。もう私には、写真を撮る必要がないし、撮ることもできない。だって、あなたが居るから。所詮、写真なんて、果たされぬ希望を現実から切り取ることしかできはしない。しかし、あなたといる今は、そのまま全てが私の現実なんだから。ねえ、お願いです。あなたの性器を舐めさせてください。そして、私のペニスを、肛門を、もっともっと、厳しく責め苛んでください。お願いです」
「写真を撮らなくなったあなたに、どんな世界が残されているというのですか。たとえ、あなたの全人格を掛けても、現実の中で、あの作品に対抗できる世界が生まれる可能性はないと、私には断言できます」
「私は新しい世界を表現したいなどと言っているんじゃあないんだ。ただ、あなたと一緒に、もう一つの世界に、現実に存在し、私が写真に残した世界に行ってしまいたいだけなんだ」
全裸後ろ手縛りに緊縛されたまま、熱い口調で理解できぬ計画を語る彼はユーモラスだ。乗り出すようにして熱弁を振るった股間のデルタからはまた、小さなペニスが隠れてしまっていた。
「今、隠してしまったペニスが、快楽の果てに、不思議なユートピアの扉を開いてくれるって訳なのかしら」
「そんなんじゃあないんだ」と大声で言った彼は突然立ち上がり、目の前で足を広げ、醜悪なペニスを全身で反り返るようにして突き出した。私の眼前で、怒りに震える小さなペニスが、小刻みに揺れた。
「こんなものは私にとって、どうでもいい物なんだ。断ち切ってしまってもいいと思っている。たかが手段にしかすぎない物を、あなたは至上の物のように言って私を貶めてばかりいる」
「本当かしら」と私は言って小首を傾げ、小さなペニスを根元まで口中に含んだ。慌てて腰を引こうとする尻に素早く両手を回し、抱きかかえるようにして引きつけ、口に含んだなよなよとしたペニスを舌で弄ぶ。唇と舌で緩急リズムを付けて弄ぶと、ペニスが遠慮がちに口中で膨らんできた。
私も立ち上がり、背後に回した手で後ろ手に縛った縄の結び目を解いた。緊縛を解いても、彼の痺れきった両手は、だらんと下に垂れ下がったままだ。呆然と突っ立ている彼を抱きしめ、口を強く吸った。私の口の中におずおずと差し込まれて来る彼の舌が可愛くて、私は、十分違う世界を体験させて貰っていると思った。何がそんなに不十分だというのか。私には分からなかった。
ひとしきり抱き合った後、私たちはなんでもなかったかのように手を取り合って裸のまま浴室を後にした。
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