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2 オートバイ(12)

「ねえ、分かった」
素っ裸の尻を掲げたまま、振り返った祐子の顔が笑っている。黙って頷くと、身を翻して正面を向いた。つるつるの股間から小さな性器が、悩ましそうに顔を出している。下半身のもどかしさに耐えかねて、バイクの顔が苦悩に歪む。

「ねえ、バイク。どうして毛を剃っているか分かる」
バイクが黙って首を横に振ると、涼しい声で答えた。
「勇気が出るように剃り落とすの。服を着ていても、内腿に触れる剃り跡の感触が、勇気を出せって私に告げてくれるの。そう、私は普通じゃないんだって、元気が出るのよ」
下半身が麻痺しているのを知っていて、俺を馬鹿にしているのだろうかと、バイクは思ってしまう。しかし、奔放な祐子の態度はいつもと変わったところがない。かえって他人の目が無い分、自然な振る舞いにさえ見える。

確かに普通ではなかった。俺もそうした新しい地平に向かうべきなのか。バイクは迷う。捨て去った過去が重すぎるような気がして苦しい。
「ねえ、バイク。せっかく来てくれたのだから、私の毛を奇麗に剃ってちょうだい。いつも週末に剃るんだけど、一人ではうまく剃れないのよ、お願い」
バイクの返事も待たず、素っ裸のまま洗面所に戻り、ジレットの剃刀とシェービングスプレーを持ってきてバイクに手渡す。
顔をこわばらせたバイクを尻目に、目の前で大きく足を開き、股間を突き出す。呼吸と共に息づく、剥き出しの性器が眩しい。

覚悟を決めたバイクは、祐子の陰部全体にシェービングスプレーを振りまいてから、慎重にジレットを使った。鋭い刃先でジョリジョリと短い陰毛が剃り落とされる。前を剃り終わると祐子は後ろを向き、再び尻を高く掲げた。
「肛門の周りの毛もよく剃ってちょうだい。私は毛深い方みたい」
バイクの頬がまた赤くなってしまう。
前と後ろから陰毛を剃り上げると、祐子は姿見の前に立ち、仕上がり具合を確認する。
「じょうず、バイクは何をしても最高ね」
うれしそうに戻って来て、バイクの手を取った。

「祐子、先生に折檻されたとき。鞭打ちの後、素っ裸にされて縛られなかったかい」
「先生には縛られなかったわ。でも、違う人に手錠を掛けられたの。今から考えると、怖いほど素敵な人だったみたい。でも死んでしまったわ。私も勇気を出さなくちゃ」
バイクには理解できなかったが、強烈な記憶が三年前の祐子に刷り込まれているらしいことは分かった。
俺も頑張るか。バイクは珍しく前向きに考え、新鮮な気持ちで祐子のマンションを後にした。
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