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12.ひとすじの道(3)

「おとなしくした方がいい。オシショウは本気で撃つ。ついさっき悲劇の第一幕が終わったばかりだ」
耳元で飛鳥の低い声が響いた。Mと弥生を背中合わせにして互いの手首を二本の手錠で繋ぎ合わせた。
「ほらそこで、一足先に旅立った者たちが集い合っている」
オシショウの冷ややかな声が流れた。声に打たれたように二人がステージ奥を見た。エジプトの神殿をかたどった大道具の前に四つの死体が転がっている。死体の前に後ろ手錠をかけられた修太が正座している。膝が崩れないように縄で厳重に縛られ、猿轡をきつく噛まされていた。鼻から低い呻きが漏れ続けている。Mと弥生の裸身が硬直し、心臓が凍り付いた。触れ合った尻の筋肉が緊張する。恐怖と怒りが、鳥肌立った二人の素肌を交流した。

「裏切ったのね」
Mが悲痛な声を出した。やり場のない恥辱が全身を駆け巡る。
「いや、希望をかなえてやっただけだ。道を説くだけでは空しさが残る。実践してみせることが功徳なのだ。この者たちはもう、滅びを惜しむ必要もない」
オシショウの詭弁が客席に流れた。飛鳥が楽しそうにMと弥生の裸身を見回し、乳房の横のフォルスターからベレッタを抜き取る。

「オシショウの希望では、全員に滅びをプレゼントしたいらしい。だが強奪事件の責任を負ってもらう役が必要だ。修太かピアニストのどちらかは滅びるわけにはいかない。裁判の結果を待ってから滅びてもらうことになるね」
飛鳥が解説者気取りで説明した。Mの正面に回って言葉を続ける。
「ピアニストがいないようだけど、どうせMと同じで素っ裸なのだろう。パンツでも捜しているのかい。でも約束は約束だ。午前零時までは待つよ。ちょうど後三十分だ」
弥生の尻の震えが素肌に伝わる。弥生も飛鳥の言葉を理解したのだ。確かに、全員を殺してしまっては飛鳥とオシショウが逃亡した後の追及が厳しい。地の果てまで捜索の手が伸びるだろう。警察と世間が納得できる逮捕者が要るのだ。首謀者と呼べる者はオシショウとピアニスト、修太の三人しかいない。そして、生け贄に選ばれた修太が目の前で縛られている。他のメンバーの運命は、すでに決まっているのだ。

「Mには手錠は似合わないね。やはり縄がいい。自分でもそう思わないか」
突然、飛鳥が場違いなことを言った。ロンジンの腕時計から上げた目がMの胸を見つめている。粘り着くような視線だった。時間を持て余しているに違いないとMは思った。計画どおりの進行しかできない飛鳥は、待ち時間が不安でならないのだ。官能で不安を紛らわせようとしている。せっかくの才能に応用力と決断力が伴っていなかった。そうだとすれば、舞台に転がった四つの死体の仲間入りをするまでには三十分が残されている。まだ生き残る道はある。時間を稼げばピアニストか睦月がやってくるに違いなかった。チャンスが開けるかも知れない。今は飛鳥の欲望に応え、虐殺の決断をそらさせるしかない。

「飛鳥に縛られてみたいわ」
陰湿に燃える飛鳥の目を見つめてMが言った。唾を呑んでうなずいた飛鳥が大道具の裏へ消えた。荷物の梱包に使った麻縄の束を持って戻ってくる。オシショウはなんの興味も示さず、黙ってビールを飲み、飛鳥の行動をながめている。だが、右手はベレッタを握ったままだった。飛鳥が用心深くMと弥生を背中合わせに繋いだ手錠を外し、フォルスターを取り去る。弥生の後ろ手を改めて手錠で拘束した。オシショウの拳銃を意識した二人に反撃のチャンスはない。飛鳥はMの裸身をオシショウの正面に向けて晒した。麻縄を持って背後に回り、剥き出しの尻を指先で突く。縛りやすいように後ろ手になれという合図だ。Mは屈辱に奥歯を噛みしめ、黙々とビールを飲むオシショウをにらみ付けた。
背中で高々と交差したMの両手を飛鳥が厳重に縛り上げる。後ろ手を縛った縄尻を高く引き上げ、首の両側を通して胸元で結び目を作った。荷造り用の太い麻縄が素肌を責める。二本の縄が左右に分かれ、豊かな乳房を菱形に囲んで緊縛する。臍の回りにも菱形の縄目ができた。長く延びた縄尻を持って、飛鳥が股間に屈み込む。

「この縄で股間を縛る。陰唇に吊したかわいいリングに縄を通してやろう」
Mの顔を見上げて飛鳥が言った。口元に嫌らしい笑いを浮かべている。目の前には切れ上がった股間がある。黒々とした陰毛の間に金色のリングがぶら下がっている。飛鳥の長い指が二枚の陰唇を繋いだリングを摘んだ。臍の前の結び目から下ろした縄を慎重に輪に通してから、再び背後に回った。
「股縄がずれないように、結び目を尻の穴に入れてやるよ」
背中に陰惨な声が落ちた。飛鳥が楽しそうに縄の長さを測って大きな結び目を作った。
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