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- 2010/08/30/Mon 17:02
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- 第1章 -M-
スタジオに戻り、ソファーに並んで腰を掛けた。この一か月で始めてのことだ。裸で一緒に並んで座っている二人。まるで恋人同士みたいだった。
「記念の写真を撮ろうか」と言って彼は、三脚に載った埃を被ったハッセルブラッドの側まで立って行った。カメラのフイルムマガジンをポラロイドパックに替え、セルフタイマーをセットする。ジーというタイマーの音を背に、急いで帰って来る股間で小さなペニスも揺れている。私は、いつになく穏やかな顔をしていると感じながら、彼と一緒にカメラに収まった。
できあがった写真は、照明を使わなかったため少し暗い。斜めに構図を取ってあり、画面手前に膝を揃えて足を曲げている私が映っている。手は品よくデルタを隠すようにしている。表情は静かで、目と口元に優しい微笑みを湛えていた。いい写真だ。さすがにプロと思ってよく見ると、私の裸身に隠れ、彼は顔しか映っていない。その顔も悪戯そうに笑っているようだ。何となくまた、だまされたような、くすぐったい気持ちが裸の全身を包んだ。
「記念だから、持って帰ってください」と差し出された写真を、思わず受け取ってしまった。なんの記念だろうかと思案する間もなく彼が、
「明日もまた、来てくれますね」
珍しく念を押した。しばらくなかった別れの言葉に、私はちょっぴり動転し、しっかり首を縦に振ってしまったのだ。
帰りの車の中で、肉体に痛みが残らなかったのは彼を送って来た日以来のことだった。久しぶりに清々しいコンデションで、くねった山道を運転できると思った途端、言いしれぬ寂しさがこみ上げて来た。今日私は、彼から何もしてもらえなかった。たった一枚のポラロイド写真は、その記念ということなのか。私に弄ばれて喘ぐ彼の姿が一瞬甦り、黒々とした靄のような感情が私を支配した。
「まあ、いいや」と、私は心の中で声を出した。とにかく今日は、お尻も乳首も責められることはなかったのだから。
明日のことは、明日という日が決めることだ。