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7 暴虐(5)

ロードスターを止めた木犀の反対側にある、これも大きな曲がりくねった松の下で、彼は歩みを止めた。ほんの十メートルの距離だったが、私は息が切れ、緊縛された乳房を弾ませた。そんな私にお構いなく彼は、首を縛った縄尻を垂れ下がった松の枝目掛けて投げた。枝に掛かった縄尻を引き絞り、無造作に首縄で止める。私は絞首刑になる罪人のように、松の枝から吊り下げられてしまった。ただ嬉しいことに、両の足の裏はまだ辛うじて大地を踏みしめていた。
痴話喧嘩という言葉が不意に脳裏を掠めた。素裸の私を松の枝に吊した彼も素裸なのだから、外見には十分痴話喧嘩に見えるかもしれないが、白昼堂々と繰り広げられた彼の行動は、もう常軌を逸し過ぎていた。これはもう、私の生死が賭けられた拷問に相違なかった。
私を松の枝に吊した後、彼は無言で母屋に入り、僅かの時間でだらしなく服を着て戻って来た。手に割り箸と、帯締めのような組み紐を持っている。

「ここでしばらく、頭と身体を冷やすがいい。私はこれから、あなたに会わせてあげるために、大切な友人を招待して来る。その汚れきった醜い目で、美しい世界の住人を見るがいいのだ」
そんな人はあなたの奥さんだけで十分ですと、応えようとした私の顎を彼の左手がつかんだ。
「こんな山の中だから心配はないが、大きな声を出されて家族が興奮するといけないから、猿轡をしてあげよう。口を開いて舌を出しなさい」
言うことを聞かない私の鼻を彼が強く摘んだ。息が詰まり、喘ぐように口を開いた私の首を吊った縄を、意地悪く揺する。窒息させられる恐怖が甦った私は、仕方なく犬みたいに長く舌を差し出した。パチンと音を立てて割り箸を割り、二本になった箸で舌の付け根を挟む。舌を挟んだ箸の両端を組み紐で縛り、二本の紐を強く引き絞って後頭部で結んだ。私の口は、突き出した舌を挟んだ割り箸をきつく、轡のようにくわえさせられ、引き裂けんばかりだ。想像を絶して過酷な割り箸の猿轡を、私はくわえ込んだ奥歯できつく噛みしめた。

「すぐ帰りますが、くれぐれも首を吊らないように注意してください。縊死した後の、糞尿を垂れ流し、ドドメ色に充血して膨れ上がった醜い顔は見たくありませんからね」
言い残して彼は、なんと、私のロードスターに乗って去って行った。急発進した後の土埃がしばし、私の惨めな裸身を包んだ。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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