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- 2010/09/21/Tue 17:36
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- 第1章 -M-
私は彼との出会いが再び場面を変え、新たに始まったかのような不気味な情緒が生まれるのを感じ、そんな情感に抗うため素裸の身体を見下ろした。
突き出した両の乳房には、鞭打たれた名残りのミミズ腫れが見える。歩みを進める脚の付け根のデルタには、彼に剃られた後の陰毛が、いがぐり頭のように滑稽に生え出して来ている。何より、歩く度にきりきりと痛む肛門の裂傷と、全身を覆う鈍い痛みが、彼との陰惨な出来事を忘れさせるはずもない。
しかし母屋の引き戸を開け、晩秋の凛とした日差しを全身に浴びると、一切の出来事がまるで、なかったことのように思われ、肌を刺す冷たい外気が私に、新しい舞台の到来をさえ予感させるのだった。
そこまで私は、彼に執着しているのか。
一人の少女の死にも関わらず私は、隣で発せられる彼のバリトンを、清々しい日差しの中で新鮮に、しかも心地よく聞いたのだった。
先ほど彼が「スケベ女」と何度も罵った言葉が再び、間近に見えるやけに澄明な山並みの奥から聞こえたようにも思えたのだが、それももう、古い芝居の台詞みたいに気にならなかった。
ロードスターの背後に回りトランクを開けた私は、紙袋に用意してあった下着とストッキングを取り出し、鮮烈な日差しの中で身に着けた。いずれも、何かのときのために用意して置いたシルク製のものだ。下半身にこびりついた排泄物がいくらか気になったが、なんと言ってもシルクの下着なのだ。たいがいのことは十分隠し通せると私は踏んだ。