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8 官能の果て(4)

私が死に至らず正気付いたときも、相変わらず息苦しさが続いていた。
ぼんやりした頭を微かに振って、生きていることを確認しようとすると余計息が詰まった。首を縛った縄尻はソファーの腕に短く繋ぎ止められ、後ろ手に緊縛された縄もそのままに、私は惨めに床に転がされていたのだった。

仰向けになった、ぼんやりした視界に二つの足の裏らしいものが見える。
目を凝らすと厚いガラス越しに、足の裏から続くすんなりと伸びた脚が見えた。その二本の脚が一体になるところに黒々とした陰毛と、肉の亀裂が見える。全裸の少女が目の上で大きく脚を開き、陰部を露出したのだ。その光景にびっくりした私は反射的に首を上げた。途端におでこを強くガラス板にぶつけてしまった。目から火が出るほどの痛みをこらえ、私は横たわった身体を無理に二十センチメートルほど床を這ってずらし、全体の視界を確保した。

「やっとお目覚めですか。楽しくなりそうですね」
うわずったバリトンが頭上から聞こえたが、見上げた私に彼の姿は見えなかった。
目の前には高さ五十センチメートルほどの、上面にガラスを張った木製のテーブルがあり、その上に全裸の少女が立たされていた。彼女の身体は私とそっくりに、菱縄後ろ手縛りに緊縛されている。細い首にも三重に縄が巻かれ、縄尻は頭上の高い梁に回して止めてあった。首を吊られ、いくらか下を向いた口には身体を縛ったのと同じ縄で二重の猿轡が噛まされている。おまけに、どうしたことか、黒い布で目隠しまでされているのだった。少女の裸身が小刻みに震えているのが、視線を通して私の身体に伝わって来る。

大きく開かせられた脚の間を通って、黒い麻縄が少女の股間を割ろうとしていた。私がいつもされていたのと同じように、黒縄が少女の未成熟な性器を挟み付け、尻の割れ目に食い込み、身体を縦に緊縛しようとしているのだ。あまりの無惨さに私は呼吸が止まり、自身で体験した激痛と屈辱を思い出し、少女の気持ちを先取りして涙を流した。
彼女には何ら、希望がないのだ。
快楽と刺激の淵に一切を投げ込んでも、まだ見ぬ地平への好奇に望みを託した私とは、まるっきり事情が違っていた。

「ひー」
激痛に襲われた少女の悲鳴が、予期したように猿轡から漏れた。
「やめなさいっ」
大きな声を出した私は、視界に入らぬ彼に向かって言葉を続けた。
「人にはそれぞれ分があるものよ。ヴァイオリンの少女は音楽の中にあってこそ美しく輝くのよ。まだ性を知らない少女に、淫らな思惑を抱くのはやめたがいい。快楽のために女を責め苛みたかったら私を責めればいい。あなたとは全く違う思惑でも、付き合ってやることはできるわ。私は大人の女なんだから。でも、子供を勝手に性の世界に巻き込むことは、決して許さない」

「ふふふふふっ」と、鼻で笑う声が頭上で響き、少女の裸身の影から陰鬱な顔をした彼が姿を現した。
「別にあんたの許しを得ようなんて思ってはいない。また、あんたみたいなスケベ女と付き合っているほど暇でもない。私の少女は美しい精神の持ち主なんだ。スケベ女と一緒にされてはたまらない。彼女はあんたと違って、私を向こうの世界にきっと旅立たせてくれるはずだ。だって彼女は初めから向こうの世界の住人なんだから。うまくいかないはずがない。何が思惑が違うだ。向こうの世界に、思惑だとか思いやりだとかいった、面倒なものはないんだ。ただ絶対的な自由がある。これだけだよ」
「卑怯者め、恥を知りなさい。所詮淫らな快楽しか考えていない変態男め。いくら狂気を装ったところで、あなたの逃げ込む先なんてないんだ。素直に自分の性向を認め、許される範囲の楽しみに耽っていたらいい。私を含め、きっと邪魔するものなんていはしないのだから。少しばかりの性的異常を針小棒大に思い込んで、まるで自分が天才か狂人でもあるかのように見せ掛けるのは、滑稽すぎて笑う気にもなれないわ。今ならまだ遅くはない。少女を家へ帰し、作品の世界だけで付き合いなさい」

「何も分かっていないスケベ女の説教を聞く気はないね。私は、セックスなんかになんの関心もないんだ。あんたと一緒にされては叶わないね。確かにあんたはただのスケベ女だが、私には確固とした思想がある。絶対自由という思想を現実のものにするために私は、好きでもないことをしながら戦っているんだ」
「あなたの思想なんてくそくらえだわ。何が絶対自由よ。何時だって、何処にいたって、今までも、これからも、ずっと、あなたは自由であった試しはないし、これからもない。つのりにつのった思い通りにならない不満が、その薄汚い頭と、ちっぽけなオチンチンの中にゴミのように溜まりきってしまっただけじゃあないの。そんなあなたが生きていけるのは、写真という作品世界の中だけなのよ」
「もう言うことはそれだけかな。聞き苦しいことを、それだけ長々と喋ったのだから、後はもう、おとなしく糞まみれの身体で横になって見物していて欲しいもんだね」

言い残して彼は、また少女の背後に消えた。彼が嘲ったように、確かに私は糞まみれだった。しかし、恥ずかしさに小さくなるどころか、これまでにも増してしっかり、彼のやることを見据えようと決心して、縄の付いた首を真っ直ぐに立て直した。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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