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8 官能の果て(5)

まず、彼は少女に鞭を振るった。私の肛門に差し込み、強引に引き抜いた凶々しい黒革の鞭が、少女の肌を引き裂く不吉な音を二回聞いた。しかし、少女は悲鳴さえ上げない。ただ、全身を絶えずブルブルと小刻みに震わせているだけだ。その震えも、恐怖によるものか、怒りによるものか判然としない。

また二回、鞭音が響いた。少女の反応に変わりはない。全身の震えだけが高まっていく。恐らく少女は、後ろ手に緊縛された不安定な姿勢で首を吊られ、高いテーブルの上に追いやられ、目隠しまでされて視力を奪われてしまったため、自分の肉体にどんな危害が加えられるか、痛みが襲って来る瞬間まで理解できないのだ。いや、突然我が身を襲ってくる激痛を不安の絶頂の中で、ただ受容するしかないのだった。縄で首を絞首される恐怖と、目隠しをされ視力を奪われたことで、何が肉体に襲い掛かってくるのかを予知できぬ恐怖とが、彼女の全身を悲鳴を上げるいとまさえないほどに緊張させているのだ。
なんという恐ろしい責め苦だろうか。拷問よりも過酷に、責められるものの神経をずたずたに引き裂く悪行を、彼は年端も行かない少女に加えているのだ。怒りに強く奥歯を噛みしめた私の口の端から一滴、血が滴り落ちた。

「責め甲斐のない石のような身体だ」
自分で演出した舞台が全然理解できていないように彼は吐き捨て、鞭の代わりに、先ほど少女が激しく反応したヴァイオリンを拾い上げた。無造作にヴァイオリンを掴もうとした指が弦に触れ、調子の狂ったGの音が高く部屋中に響いた。瞬間、少女の震えがやみ、全身を耳にして我が身に降り掛かることを知ろうとした。

彼が振り上げたヴァイオリンが少女の頭越しに私の目に入った。振り上げるとき、ヴァイオリンの胴に空いた共鳴用の穴に空気が擦れる低く咽ぶような音を、私は確かに聞いたと思った。その音は全身を耳にした少女の聴覚を打ち、音を追い続けていた彼女はそのとき、自分の身に起こることの全てを明確に映像化したはずだった。

ヴァイオリンが猛烈な速度で少女の白い尻に打ち下ろされる瞬間。

「ヤメテッ」と叫ぶ声が、鮮明な発音で猿轡の中から聞こえた。

多分、幻聴ではないと思うが、少女の高く澄みきった声は、その後に続いた、したたかに小さな尻の肉を打つ音と、砕け散るヴァイオリンの音との錯綜狂乱した騒音のラッシュの中でかき消されてしまった。

頂点まで急激に高まった状況に取り乱されてしまったように、彼は手の中に残ったヴァイオリンの竿を振るって二度、なんの反応も示さなくなった少女の尻を打った。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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