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1 ピアニスト(3)

「反対方向ですみません。でも、凄い運転ですね」
「ピアニストの家は山地なのか」
彼女は独り言のようにつぶやいたきり黙り込み、よく知った道をドライブするようにスムーズに運転する。交通量が少ないのに、遅すぎるとさえ思われるほどにしっかりと、制限速度を守って走る運転が不思議だった。
山地という言葉が引き起こした不自然な沈黙に驚き「意外に安全運転なんですね」と、気を引くように尋ねると、
「捕まれば懲役三年だからね」と、わけの分からぬ返事が返ってきた。
せいぜい罰金と免許停止ぐらいな事は僕も知っていたが、聞き返すことがためらわれてしまった。

「君は、山地の古い家を知っているかな」
突然彼女が聞いた。多分あの、主人が自殺したことで騒がれた築三百年の家のことだろうと思ったが、
「知りません。僕の家はそんなに山奥ではないんです。あなたの言っている家は多分、昔林業で栄えた山林地主の家だと思うけど、僕の家は代々材木商をしていたんです。だからずっと手前にある」と答えてしまった。
「そうか、ピアニストの家も資産家なんだ。商売を嫌ったおやじさんが、歯医者になったってわけ」
「いいえ、父は婿なんですよ。資産家なのは母の方で、父は半ば趣味で歯医者をやっている」
再び会話が弾むようになったが、僕は身元調査をされているような不快感を感じた。しかし、積極的に家庭内のことを話しているのは僕なのだからあきれる。「ミニコミ紙の営業は長いのですか」と話題を変えると「昨日からやってる」とにべもない返事だ。

「私は二十七歳だけど、ピアニストは幾つ」
「十八」
「へー、高校三年生か。ずいぶん余裕があるね、歯医者の受験勉強はしなくていいの」
「あなたは営業だけでなく、説教もするんですか」
「ごめん。怒らせてしまったかな。確かに、私の知っている君はピアニストであって、受験生ではないものね。余計なことを言ってごめんなさい」
急にしおらしいアルトが口を突き、僕をどぎまぎさせる。追い打ちを掛けるように「君のペニスは大きいんだね」と続けた。
寒い風にあおられる頬が真っ赤になってしまい、先ほどペニスをつかまれた感触が甦り、またむっと勃起し始めていた。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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