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- 2010/10/15/Fri 15:00
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- 第2章 -ピアノ-
「そうだったのか、彼女があの有名な悪女だったのか」とつぶやいて、また大きく溜息をついた。
当時彼女の名は、一種名指しがたいセクシーなイメージとともに悪女の代名詞として、僕たち少年の話題にも上っていた。それはもう地元のスターというより、音楽好きの僕にとっては、オペラのプリマのように遠くきらびやかな怪しい存在として、性的に身近に感じられていた。確か、性の饗宴のさなかに少女を殺し、その罪に狂った屋敷の主が自殺したはずだった。その惨劇から一人生還したプリマは、少女の死体を捨てようとした罪で裁判に掛けられ、有罪になったと語られていた。しかし、噂はそこまでだった。プリマが服役したのか、執行猶予になったのか、誰も関心がなかった。ただ、セックスの権化として、悪女のイメージだけが人々の記憶に残った。
僕は、その悪女の実物を見てしまったのだ。見るぐらいならともかく、あのセックスの達人にペニスまでつかまれてしまっている。ひょっとして、母の心配もあながち、的外れではないのかも知れなかった。
ベットに横たわったまま、ぬらぬらと精液に粘るペニスに、つい手を添えながら、僕はMのことを思った。ここでまた射精してしまうともう、今日は四回目の射精だった。しかし過去と現在を駆けめぐって、悪女の記憶が僕を異様に高ぶらせる。性懲りもなく僕は、ペニスに当てた手に力を加えた。
身も心も疲れ果てながらも、抗うことが出来ない官能に焼かれるように、ヒリヒリとするペニスを痛めつけると、父のことが頭をかすめた。
ざっと考えて二時間以上を、父と彼女はどのように過ごしたのか。Mの訴えた歯の痛みから考えて、それほどの治療時間が必要とは思えなかった。
そして、母から僕と彼女のことを、事件の記憶とともに聞いたであろう父は今、彼女のことをどう思っているのだろうか。
親密そうにMと目を見交わしていた父の顔が甦り、僕はその映像を振り払うようにペニスを苛め続け、いつになく苦しい四回目の射精を力無く両のてのひらで受けた。