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- 2010/12/07/Tue 15:00
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- 第2章 -ピアノ-
「早く下に降りて抱え上げてよ。私はこんな格好なんだから、一人では上がれないの」
一瞬僕は、ぽかんと口を開けたままでいた。窓から客を出迎えに行くなんて、考えたこともなかった。まったく彼女のすることはすべて、常識を外れている。
威張るように言う彼女の言葉に呆れながらも、僕は窓を乗り越え、素っ裸のまま地面に降りた。
本当に久しぶりに、素っ裸の僕のすぐ前に、素っ裸の彼女が立っている。あの雪の夜以来のことだった。僕はうれしくなり、大きく深呼吸した。
「あれ、ピアニストは裸で寝る習慣なの。いい習慣だね。でもペニスは小さいままなんだね」
場所柄を考えない彼女の言葉を無視して両手を広げ、中腰のままのMを抱きしめた。
冷たい肌の感触が心地よく僕の裸身に張り付く。即座に勃起したペニスを振り立て、腰を沈め、中腰になった彼女の陰部へと突き立てる。行きすぎたペニスの先が、肛門に挿入された金属棒から延びる冷たい鎖に触れた。ペニスが痛み、異様な現実がやっと、僕を包み込んだ。
ぎこちなく腰を引いて身体を立て直した。さりげなくそっと、うなじに顔を埋めようとすると、首に巻かれた首輪が目に入った。シェパードのケンに付けられていた皮の首輪が、ほっそりとした首にはめられていた。首輪から伸びた紐が途中で切れ、足元へぶら下がっている。
「歯で食いちぎって来たのよ。夜は後ろ手錠にされるから、歯しか使えないのよね」
僕の視線に気が付いたMが、素っ気なく言った。
身を引いて後ろに下がり、全身を見る。ケンの首輪の下に豊かな乳房があり、ツンと立った二つの乳首が並んでいる。なだらかな肩先が見えるだけで、胸を張ったままの両手は背中に回されていた。背後に回って見ると、ちょうど尻の上で、手錠が後ろ手に掛けられていた。これでは、窓から上がれないどころか、横になることさえ大変なようだ。平気な顔をしている、彼女の神経を疑いたくなってしまう。
妙に白けた気分になったが、黙って頷き、尻に手を回して抱き上げる。剥き出しの尻の割れ目から延びる鎖が邪魔で、二回ほど抱く位置を変えた。
彼女を抱き上げるのも雪の日以来のことだ。しかし今夜は、それほどヒロイックな気分にはなれなかった。シチュエーションが違うだけではなく、何か、僕の身体の中で、異常な状況を拒絶する気持ちが芽生えたせいらしかった。
全身に力を込めてMの身体を窓に押し上げると、鈍い音がして、彼女は部屋の床に落ちた。