2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

8 逆さ吊り(1)

僕はまるで、時代劇に出て来る牢番のようだった。
シニサロのモトクロス用の手袋をした右手に、黒い麻縄を握っている。縄の先は、前を歩く素っ裸のMの腰を二巻きした縄に繋がっていた。彼女が歩みを進める度に、白い尻が怪しく揺れる。尻を割った二条の縄の結び目が、性器と肛門に押し込まれているせいか、苦しそうに尻を振って一歩一歩を慎重に進める。歩む度に尻の筋肉が、きゅっと収縮するさまが僕の淫らな性感を刺激する。
Mの歩みに連れて柔らかな粘膜をなぶる、性器と肛門に挿入された結び目は、どんな痛苦と恥辱を彼女に与えているのだろうか。僕は、自分の肛門をえぐった縄の感触を、ざらついた痛みと狂いたくなるような恥辱とともに思い出した。

揺れる尻の上には、後ろ手に交差された両手首が緊縛され、首筋近くまで高く持ち上げられている。固く握られた両手が寒さの予感に、微かに震えたようだった。
こころなし、首を下げて歩く全裸のMの前を、暖かそうなクロテンの毛皮のコートを着た母が、手に黒い鞭と縄の束を下げ、ケンを引き連れて自動ドアへと向かう。僕の後ろからはエディーバウアーのダウンジャケットで身を固めた父が続いているはずだ。
厳寒向けの重装備の一団の中で、素っ裸のMだけが場違いな存在だった。

自動ドアの開く音と「うー、寒い」と言う母の声に乗って、強烈な寒気が頬を打った。
目の前で、Mの裸身がブルッと震える。
躊躇することもなく、母とケンは漆黒の屋外に出て行く。毅然とした母の背中に急かされるように外に出た僕の目には、ぼんやりした街灯の明るさしか見えなかった。

ブーツを通して、さくさくした雪の感触が伝わって来る。
目が暗闇に慣れると、外は意外に明るい。街灯に反射する雪明かりで、新聞が読めると思われるほどだった。
風はなく、大きな雪の結晶が音もなく、ただ深々と舞い落ちて来る。

静かだった。
すべての音を吸い取って積もる雪は、凍て付く寒さの中で綿菓子のように湿気のないパウダースノーになっていた。でも寒い。羽織っていたパーカーの襟を合わせ、Mを見つめる。彼女の裸身は雪よりも白く見えた。小刻みに震えながら小さな歩幅で歩む白い肌に、雪が舞い降りる。黒々とした髪はもう、うっすらと白くなり掛けていた。僕は慌てて縄尻を捨て、パーカーを脱ぎ、フードを立て、緊縛された裸身を頭から覆った。

「余計なことをするんじゃない。その女は覚悟を決めているんだから、あんたの出る幕じゃないの」
振り返った母に怒鳴られて身をすくめ、パーカーを情けなく剥がした。頭に深く掛かったフードを外すとき、彼女と目が合った。寒さに凍えきって固くなった頬に、無理矢理微笑みを浮かべようとした震える口元で、ゲランの赤が鮮やかに僕の目に映えた。
「だいじょうぶよ」と、彼女の唇は動いたのだ。
そう、Mは大丈夫に決まっている。彼女は憧れのプリマなんだから。
僕は大きく身震いし、前を行く母に分からないようにして彼女の肩先に唇を当てた。凍る肌で唇が痛み、舌先で解けた雪に彼女の香りが混じった。

プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

最新記事
カレンダー
10 | 2010/11 | 12
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
free area
人気ブログランキングへ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR