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8 逆さ吊り(2)

「ごほん」と、後ろで父の空咳が聞こえた。見られたっていいと僕は思った。身悶えするほど羨ましがればいいのだ。
いつの間にか、前を歩く母との間が開いた。僕はできるだけMの身体に密着するようにして、裸身に降り掛かる雪と寒気を妨げようとした。僕の体温をいくらかなりとも彼女に感じ取られたいと、ただそれだけを思い、のろい歩みがますます遅くなる。雪を踏みしめる素足はきっと、感覚を無くして凍り付いていると思うと、母の仕打ちが恨めしく、抗議一つできなかった自分が責められてならなかった。

「早くしなさい」
数メートル先の梅の木の側から、母の鋭い声がとんだ。降り続く雪のため、はっきりとは見えないが、母は二本の梅の木に挟まれ、疎水越しに光る街灯をバックにした黒いシルエットで、足を開いて立っていた。もっこりした毛皮のコートが黒い雪だるまのように見える。十センチメートルほど足が沈み込む、深々と積もった雪に足を取られ、ふらつきながら母の前に進んだMに「正座しなさい」と、冷たい声が命じた。
「凍えきってしまうよ。もう許してやってよ」
母の指示が聞くに耐えられず、泣きそうな声で僕が頼むと、
「黙っていなさい」と、毅然とした声で応えたのは、母ではなく彼女だった。
静かに膝を折り、雪の上に端然と座ったMの裸身を見下ろし「この寒さに素っ裸でいても、まだ頭が熱いようね。十分頭に血を上らせてから冷やした方がいいみたいね。一石二鳥のやり方で熱を冷ましてやるわ。足を開いて、雪の上に仰向けになりなさい」と母が命じた。
傲然と母を見上げてうなずいたMは、正座のまま後ろに倒れ、長い両足を大きく横に開いた。積もった雪が身体を優しく受け止め、白々とした裸身の半ばが、雪に埋もれた。

黒い縄を持った母が彼女の足元に屈み込み、足首に厳しく縄を縛り付けていく。
両方の足首に縄をくくりつけた後、左右の縄を分けて父と僕に持たせた。Mの裸身を逆立ちにさせて、二本の梅の木の間に吊せと言うのだ。

「あなた達は、私の指示に逆らえるほど、立派なことをやっていたの。早く、この女を吊しなさい」
縄尻を持ったまま、互いに躊躇している父と僕に叱声が飛んだ。
仕方なく二人は左右の梅の木に別れ、手頃な枝目掛けて縄を投げた。木と木の間は二メートルは離れていない。父と僕は互いに顔を見つめ合って呼吸を合わせ、できるだけ彼女に苦痛を感じさせないようにバランスを取りながら、縄を引き絞っていった。

宙に吊り上げられるMの重みで枝がたわみ、降り掛かる雪に梢から落ちる多量の雪が混じった。左右に押し広げられた股間を落ちた雪が被い、痛々しく股を割った二本の黒縄を白く覆った。
空に向かって両足を開いたまま、二本の梅の木の間で逆立ちに吊された彼女は、頭の半分ほどが降り積もった雪の中に埋もれた。
その姿はまるで、純白の若木が雪を割って生え出したようだった。樹皮に絡み付く黒いツタのように、裸身を縛った麻縄が凶々しい。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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