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2 オートバイ(11)

素肌に紺のバスローブを着て、リビングに戻る。
青ざめた顔を小刻みに震わせ、缶ビールを握りしめたバイクが、ドアを開けた祐子の目を見つめて口を開いた。唇を歪め、早口に言葉を紡ぎ出す。
「俺が映子を殺したと言った天田の言葉に嘘はないんだ。しかし、どうしても、あの時の事故の事情を祐子に知って欲しくて来てしまった。頼むから誤解のないように聞いてくれ」
「いいの、聞かなくてもいいの。かえって聞きたくないわ」
「どうして。俺は祐子に誤解されたくないんだ」
「誤解も間違いも、私はしない。だって、私は今のバイクしか知らないもの。バイクが昔の話をすれば、私は自由に歩き回っているバイクを想像しなければならない。でも、私の知っているバイクは車椅子に乗っているのよ。私の知らないバイクを想像することはできないの」
「しかし、俺は歩き回れたんだ」
「そう、昔ね。でも、今はもう変わってしまったわ。なぜ、変わってからのバイクを大切にしないの。歩けたときのバイクは私に関係ないもの」
静かに話す祐子の口調がバイクを冷静にした。

「妹に説教されている気がするよ。祐子はしっかりしているね」
「無駄なことは考えない横着者なのよ。私なんて変わりたくても、なかなか変われはしない。ちっぽけな過去が足を引っ張ってるの。勇気も足りない。その点バイクは、すべてが変わったんだと思う。せっかくのチャンスを大事にしてもらいたいの。変わることに自信を持って、私に勇気を与えて欲しい」
バイクの顔が苦悩に歪んだ。祐子の言うとおりだと思うが、頭の隅に張り付いた小さなプライドと重すぎる記憶が、休みなく過去から脅迫する。

「ねえバイク。翻訳とか、コンピューターのソフトの開発とか、あなたに相応しい仕事をしてみたいと思わない。何をやっても、バイクなら成功しそうな気がする」
バイクは、熱中する対象が祐子しかないことを、見透かされたような気がした。その祐子まで失うわけにいかなかった。それではもう、生きていけないとさえ思ってしまう。酒が欲しかった。
缶ビールを口に運んだが空だった。祐子に気付かれないよう、飲む振りをする。このまま帰りたくはなかった。何とか、別な話を考えようと焦った。

「話は変わるけど。祐子は幼いとき、お仕置きされたことがあるかい」
話が変わるもないものだった。五年前に天田が話した、映子の折檻のことが気になっていただけだった。声に出してから、頬が赤くなるのを感じた。
「ええ、されたわ」
呆気なく祐子が答えた。再び足下を見透かされたような答えに、なおも顔が赤くなった。しかし、聞かずにはいられない。
「へー、本当かい。どんなことをされたんだい」
「思い出したくないくらい酷いことよ。でも、忘れないために、いつも思い出すの。私が変わっていくには、記憶を乗り越えていくしかないもの。担任の先生に素っ裸のお尻を、死ぬほど笞で打たれたのよ。足を広げられて、お尻の穴が裂けるほど打たれた。六年生の夏のことよ。まだ三年しか経っていない」

嫌になるほど、天田のよた話と似ていた。しかし、祐子が嘘をつくはずがない。強烈な性感がスパークして、バイクの脳裏を走った。反応しない下半身を煽るように想像力が働く。
目を閉じてしまったバイクの前で、祐子がバスローブを脱いで後ろを向いた。
「見て、こんな格好で笞打たれたの」
祐子の声で目を開いたバイクの前に、両足を開いて突き出された真っ白な尻があった。尻の割れ目が大きく開かれ、桜色の肛門も、陰部も、すべて丸見えだった。不揃いに剃られた陰毛が微かに生えだしていた。

初めて見る女の裸身だった。しかも、一番恥ずかしい股間を押し開いてみせる祐子の気持ちが理解できなかった。頭の中だけで苦しい官能が渦巻く。残酷だった。
官能の高ぶりに、思い通りに反応できない感覚を失った下半身が、巨大な岩のように想像力の果てに聳えている。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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