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4.虜囚(5)

「ハハハハハ、Mはいつも僕たちの邪魔ばかりする。でも、今回は遅すぎたね。霜月の言うように、もう戦争が始まっているんだ」
ピアニストの陰惨な笑い声が会議室に響いた。
「ピアニスト、声が大きすぎるよ。山岳アジトに移るまでは、ここにいなくちゃならないんだ。Mも静かにして欲しい。葬儀社の社員の出る幕はない」
修太の皮肉な声がMを刺激した。大きく胸を張って再び口を開く。
「山岳アジトですって。子供の遊びと同じじゃない。でも人が死ねば遊びでは済まないわ。修太、ピアニスト、そしてオシショウも警察に行きましょう。弥生もきっと後から自首をするわ」
大声がまた部屋中に満ちた。怒りで顔を真っ赤にしたピアニストが椅子から立ち上がり掛けると、居眠りをしていたはずのオシショウがいち早く立ち上がった。

「Mさん、この場所には因縁があるね。わざわざ来てくれてありがたいよ。だが、ご覧のとおり弟子たちは世事で忙しい。私がお相手しよう。弥生も、ちゃんとMさんの後ろに控えているよ」
オシショウの声でMが振り返った。今入って来たばかりのドアの横に、黒い板壁を背景にした白い尻が見えた。陰門を封鎖した金のリングと、肛門からのぞいている銀色の棒が目を打った。Mの視線を意識して、剥き出しの尻は微かに震えている。驚愕がMの全身を捕らえた。大きく目を見開き、信じがたい光景を見つめた。途端に怒りが込み上げてきて、掠れきった叫びが喉を走る。

「弥生になんてことをするの。あなたたちの仲間でしょう」
「M、大声を出さないで。私が望んで懲罰を受けているのよ」
即座に弥生の声がMを遮った。熱く燃え上がった怒りに冷水を浴びせるような響きだった。白い尻の後ろから発せられた言葉が、Mに現実を理解させる。もはやMはシュータの虜囚に過ぎなかった。後ろ手を戒めた手錠が肌に冷たい。

「やっと冷静になってくれたようだね。Mさんの処遇は私が考えよう。ピアニストたちはそのまま計画を詰めなさい。私の方は極月が手伝ってくれればいい。さあ、また仕事だ」
オシショウの一声で会議室に秩序が戻った。ピアニストを中心にした六人の輪では、新たに加わった霜月が大きなバッグを開けて一人一人に銀色に光るリボルバーの拳銃を配った。機械工学科の信者たちが研究室で造った銃を下宿から運んできたのだ。手作りだが精巧で丁寧な造りだった。六人の表情が見る間に引き締まり頬が赤く昂揚した。ドアの横ではオシショウと極月が、裸でひざまづいている弥生を挟んでMと向かい合っていた。

「Mさん、弥生の言葉を聞いたろう。弥生は致命的な失敗をしたが、自ら懲罰を望み、もう一度自分を鍛え直そうとしている。滅びるのには惜しい覚悟だ。二か月の懲罰が終われば見違えるほど逞しく、美しくなっているはずだ。Mさん、あなたは美しい。しかし、美しさを惜しむ努力を何一つしていない。せっかくの機会だ。弥生に倣って精進してみたらどうかね」
今やオシショウが権力を持ってMに臨む。Mは後ろ手錠のままきつく唇を噛んだ。負けるわけにはいかなかった。
「お断りするわ。私は惜しむものなどない。惜しまれる必要もない。普通に暮らすことだけが望みよ。でも、どう見ても私はシュータの虜のようだ。あなた方の暴力には屈しないが、試練を避ける術はないようね」
オシショウが横に立った極月に目配せした。極月がMの背後に回る。

「実にもったいないことだ。これほど勧めても覚醒しないとは情けない。仕方ない、神ながらの道の名において私が処遇を決める。異論はないね」
オシショウの駄目押しの声が響いた。Mを見据えた目が怪しく光る。
「正常な論理が通るとは思えない。どうにでもするがいいわ。だが屈服はしない」
毅然とした答えがMの口を突いた。オシショウの威嚇を押し返すように大きく胸を張る。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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