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3.爆破(2)

「今さら睦月に信仰を説かれるとは思わなかったわ。今度の計画が信仰にかなっているかどうか検証したかっただけよ。修太の意見が聞きたい」
「弥生、危険な考えよ。信仰に基づいて計画は立てられているのよ。検証しようというのは破戒だわ。査問の対象になる言葉よ」
弥生の横で司法担当の極月が正面を見たまま冷たい声で言った。
「極月の言うとおりだ。もう時間がない。爆破が済むまでは二度と集まれないから、それぞれの部門で必要な資金を今日配ります。修太は今後のスケジュールを説明してしまってください」

弥生の意見に終止符を打つように財務担当の如月が低い声で言った。いつも修太のご機嫌を取るのがうまい男だ。大きくうなずいた修太が立ち上がり、五人を見回してから口を開く。
「広報部門に動揺があるようで不安もあるが、やるしかない。実行は二日後の日曜日だ。今夜のうちに卯月と兵器担当の霜月が山地湖に潜って武器を回収する。実行部隊はすべて卯月が取り仕切る。後の者は細部を知らなくてよい。爆発を合図に弥生が実行宣言をインターネットで発信する。その後は顔の知られている俺と睦月、弥生、如月は地下に潜伏する。他の幹部は適宜合流、離散を繰り返して次の実行計画に備えてくれ」

修太の言葉が終わると全員が立ち上がった。目立たないように二人ずつドアを開けて外に出て行く。残った弥生の横に修太が立った。「オシショウとピアニストが計画を支持したんだ。それでいいじゃないか。計画自体は俺たちのものだ。幹部それぞれに得意な分野がある。今度の計画立案に参加できなかったといってひがむのはよせ」
修太のあいまいな言い方が弥生の神経を逆なでする。白い頬がさっと赤くなった。

「私は科学的な見方を失いたくないの。たとえ信仰の道にあっても検証を続けることは大切だと思う」
「信仰の前に科学が立ちはだかる場合もある。科学が真理ではないことは、とうに分かっているはずだろう。後は自分の信念が問われるだけだ。滅びの時に備えて精進を続けてきたことが惜しくはないのか」

修太の声が弥生の耳の底まで響いた。科学の衣装をまとって君臨した思想が、もろくも崩れ去っていった事実が脳裏を横切る。北の海峡を越えた土地に住む弥生の父は今もストレスを逃れて酔いしれたあげく、人類の平等の夢を語るのだ。親子二代で負け続けるのは情けなさ過ぎた。迷いを振り切るように弥生は明るい声を装う。

「実行を前にして、小心になってしまって悪かったわ。もう大丈夫」
「分かればいいよ。明日、シュータを代表してドーム館の葬式に行って欲しい。俺個人の問題なんだがピアニストも参列する。オシショウも来るんだ。やはり、シュータの広報担当に行ってもらいたい」
修太は弥生の手にメモを渡し、返事も聞かずに睦月と一緒にドアの外に出ていった。
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アカマル

Author:アカマル
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官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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