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13 通洞坑-3-(2)

大小二つのランタンが照らし出す坑道の闇の中で、カンナの裸身が激しく痙攣している。
全身を襲う痛みに耐えようと、きつく食いしばった唇から一筋、血が流れていた。
「兄さん、殺して。早く楽にして。もう気が狂いそうだ」
開いた口から恐ろしい叫び声が出る。
下腹部に受けた銃弾で出血を続ける産廃屋が、大きく目を見開いた険しい表情で痛みに耐え、下腹部を押さえていた右手を池に伸ばした。池の水に銃創から流れ出た多量の血液が混じり、赤黒い澪が流れていく。
池を探ってトカレフを拾い上げた産廃屋が、左手を下腹部に当てたままヨロヨロと立ち上がり、カンナの横に立った。
カンナに向けて伸ばした右腕の先で、トカレフが激しく揺れる。
「早く撃って、兄さん早く。また痛みが襲って来た。もう耐えられない」
カンナの悲痛な声が響き、込み上げる嘔吐が次の声を奪う。全身の痙攣が激しくなり、痛みに任せて裸身が地面を叩く。
「カンナ、済まぬ。逝け」
短く言った産廃屋が、トカレフを握った右手に力を込めた。

「ヤメテッ」
Mの絶叫を銃声がかき消す。
銃弾は、のたうつカンナの右太股を貫いた。銃創から鮮血がほとばしる。傷の痛みで責め苛む病気の痛苦が薄れたのか、一瞬、カンナの悶え苦しむ裸身が静止した。
産廃屋が、動きを止めた裸身に再び銃口を向けた。

その時、
「Mっ」という叫び声とともに、二条の光線が産廃屋の姿を捉えた。
銃口が光の方を振り向く。

「修太っ、伏せなさい」
Mが叫ぶとすぐ、産廃屋が無造作に続けて二発発射した。
発射音と同時に、後ろ手に縛られたMの裸身が地面を蹴って産廃屋へと跳んだ。頭と肩が、したたかに産廃屋の腰を捉える。
産廃屋とともに倒れていく身体の下に小さな裸身が潜り込み、産廃屋の両足を抱え込んでいるのが見えた。

「祐子」と叫ぼうとしたときには、倒れた産廃屋の上を滑ったMの裸身が頭から側壁に追突した。
先に倒れた産廃屋の巨体がブレーキになり、頭部を襲った打撃はそれほどでもなかった。しかし無毛の頭皮が岩角に当たって裂け、眉間の間を生暖かい血が流れていった。

頭を左右に振り、厳しく緊縛された身体を揺すってみた。縄目が食い込んだ皮膚が痛むだけで異常はない。Mの下で横たわる産廃屋は、動く気配もなくなっていた。

「Mっ」と言って、修太の裸身が被さってきた。
修太の流す温かな涙が、冷え切った心を癒してくれる。
「さあ、Mが苦しいだろう」
続いて寄って来た陶芸屋が修太を押し退け、力強い手でMを立たせた。
傍らで産廃屋の足に抱き付いたまま横たわっている祐子を、修太が優しく抱き起こしている。
祐子のすぐ前には鈍く光るトカレフが落ちている。

「二人とも、怪我しなかったのね」
改めてMが尋ねると、祐子と並んでいた修太が立ち上がって自慢そうに言った。
「Mの声で地面に伏せたんだ。頭のすぐ上を銃弾が飛んでいったよ。凄く怖かった」
「もう一発はこいつに当たってくれた」
陶芸屋が、先の吹き飛んだマグライトを目の前に突き出した。

「危ないところだったのね。良かったわ」
明るい声で言って、さり気なく産廃屋の身体を見下ろす。
Mと祐子のタックルを受けて倒れ込んだ産廃屋の頭は、地面から突き出した坑木に手酷く激突していた。妙な形に首がねじれ、見ようによってはユーモラスな姿態にも見える。誰の目にも首の骨が折れているのは明らかだった。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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