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13 通坑道-3-(4)

「分かったわ、修太さん。全員無事なのね。ほんとうに良かった。また経過を報告するのよ」
センセイは電話を切り、布団にうつ伏している助役に声をかけた。
「通洞坑へ行った教え子からの電話よ。産廃屋が死んだそうです。秘書役の女も死にかけているそうです。産廃屋の拳銃が暴発したと言っていました。後の全員は無事だそうです」
うつ伏したまま、センセイを見つめていた助役の目が鋭く光った。

「死んだか」
ぼっそりと言った助役の下半身は裸だった。大きな尻の左右に赤い手の痕が残っている。
「忙しくなるな。センセイ、もう一回お願いします」甘える語尾が、まるで今の状況と似合わない。
助役の剥き出しの尻の横に膝を突いて、中腰になったセンセイが右手を振り上げて怖い声で言った。
「助役さん。お仕置きです。両足を広げてお尻の穴まで見えるようにしなさい。選挙に負けたらこんなものでは済みませんからね」
ピシィ、ピシィと二回。両足を大きく開いた助役の尻が鳴った。歓喜に満ちた悲鳴が口を突く。

「センセイ。お仕置きありがとうございました」
真面目な声で言った助役が起き上がり、布団の上に胡座をかく。勃起したままのペニスが股間で屹立している。
しばし腕を組んで考えていたが、大きくうなずいてからセンセイに頼んだ。
「役場の観光課に電話を入れてください」
センセイの手から役場に繋がった電話を受け取ると、静かな声で命じた。

「助役だ。村木君を呼んでくれ」
威厳に満ちた声が甦っている。剥き出しの下半身がアンバランスすぎた。
「村木か。すぐこれから産廃屋の事務所に行け。関係帳簿を全部持ち出して来るんだ。産廃屋は死んだ。何をしてもかまわん。これは命令だ。急げ」
「すぐ出掛けます。助役さん」と緊張した声で答える村木の声も聞かずにセンセイに電話を返す。

助役は胡座をかいたまま両手を上げ、大きく伸びをした。
「産廃屋は死んだ。秘書役も死ぬという。県知事は産廃処分場の建設を認可しないんだ。仕事に失敗した産廃屋たちが失踪したとしても、誰も疑いはしない。そうだろう、センセイ」
恐ろしい男だとセンセイは思う。それに頼もしい男だ。男はこうでなければと思い、町長になるかもしれないと思った。

「村木の持ってくる帳簿の内容によっては、予定より早く町長を追い詰めることもできる」
「二人の死体はどうするんですか。通洞坑の奥に埋めるんですか。坑道に集まった人たちが納得するかしら」
「通洞坑は子々孫々まで、我が町の鉱山記念館の一環として残さねばならない大事な財産だ。死体など埋めるわけにはいかない。今、坑道にいる生きた人間は皆、町の住人だ。そして、住人の将来に渡る利益を守ることが私の仕事だ。私が通洞坑に行こう」

即座に決断した助役がセンセイの差し出すズボンを穿いた。上着を着て姿見の前に立った助役はもう、下半身を剥き出しにしていたときとは別人のように大きく見える。どんな格好をしていても、何をしても、いつも同じように素敵に見えるのが最高なのにとセンセイは寂しさを感じた。しかし、男たちの棲む世界は決して、そんなことは許さないのだろうと思い直した。

「ごめんください。センセイはおりますか」
教室に続く廊下から男の声が聞こえた。
センセイは慌てて白いバスローブを身に着け、ドアを開けた。
廊下の角に作業服を着た男が立っている。男はセンセイに一礼して近付いて来た。

「祐子の父です。お世話になっています」
「やあ、緑化屋さん。ご心配をおかけして申し訳ありません」
センセイの後から廊下に出てきた助役が、センセイの頭越しに声をかけた。
「助役さんまでいらっしていたのですか。恐縮です。お手数をおかけします」
「いやいや、町の人たちの心配は皆、私に責任があります」
町の幹部と技術官僚の長く続きそうな挨拶にセンセイが割って入る。
「祐子さんは無事、通洞坑で保護されました。さっき同級生の修太さんから電話がありました。もうご心配は要りません」
「ありがとうございました」
緑化屋が二人に深々と頭を下げた。
「いや、礼には及びません。私も事態を確認するため、これから通洞坑へ行くところです。仕事の都合が付くなら、ご一緒にいかがですか」
「えっ、助役さんが現地にお出掛けになるのですか。重ね重ね恐縮です。ぜひ同行させてください。仕事は早々に切り上げてきましたから、大丈夫です」
「では、早速参りましょう。センセイ、できるだけ多くバスタオルを用意してください」
部屋に戻ったセンセイが十枚ほどのバスタオルを抱えてきて、後に続いた。
「子供たちは、裸のまま保護されたそうなんです」
怪訝な顔の緑化屋に助役が歩きながら説明する。緑化屋の顔が曇った。
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Author:アカマル
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官能のプリマ全10章
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