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8.新しい提案(3)

「こいつには待避所まで付き合ってもらうよ。そこからパジェロに乗せて帰す」
極月の腰に繋いだ縄を引いて、チハルが得意そうな声で言った。厳しく緊縛された極月の裸身が大きくよろめく。解放された文月が尻を振って睦月の方に向かった。極月を曳き立ててジープの助手席のドアを開けたチハルが飛鳥を振り返る。

「飛鳥、忘れ物だよ」
チハルの声を聞いた飛鳥が、一瞬迷うように正面のログハウスを見つめた。やがて肩を落としてジープに歩み寄り、高い車内から大型のアタッシュケースを二つ取り出す。
「さあ、車まで送ってやるよ」
極月に繋いだ縄を乱暴に引いたチハルが、裸身をジープのステップに追いやった。後ろ手に縛られた不安定な裸身は頭からシートに倒れ込んでしまう。素知らぬ顔でチハルがドアを閉めて運転席に回る。後ろ姿をMが追った。鎖で繋がれた弥生もMに続く。運転席のドアを開けたチハルに、背後から声を掛ける。

「祐子がイギリスに行ったのは、本当のことなの」
チハルが眉を寄せてMを振り向く。間近に見るチハルに女の匂いが漂う。
「しつこい女だね。本当のことさ。オックスフォードで二年間、毛織物の勉強をする。テロリストの仲間になったMとは、もう道は交差しない」
「私は仲間ではないわ」
大声に驚いたチハルが改めてMと弥生を見つめた。
「ふーん、仲間ではなく、切っても切れない仲か。相変わらず趣味が悪い」
言い捨てたチハルが高々と片足を上げ、二人を繋いで垂れ下がっている鎖の弧を思い切り踏みつけた。
「ヒッー」
肛門を激痛が襲い、Mと弥生の口から同時に悲鳴が上がった。二つの大柄な身体がしゃがみ込んでしまう。トレーナーの尻に空いた穴からは、銀色に光る肛門栓が三センチメートルも飛び出していた。
「まったく悪趣味だよ。Mは本当のマゾヒストかも知れない」
しゃがみ込んで涙を流すMを嘲笑ったチハルがジープに飛び乗る。野太いエンジン音が山間に満ち、力強くジープが発進した。

「あのままチハルを行かせていいのか。ピアニストの責任だぞ」
遠ざかるエンジン音を追って、修太の声が空しく響き渡った。ピアニストは答えようともせず、修太を無視して飛鳥の前に進んだ。
「飛鳥、理事長の遺産の管理で来たはずはないな。利口なあんたのことだ。何が目的だ」
直截に尋ねたピアニストの言葉に笑顔を浮かべ、初めて飛鳥が口を開く。
「久しぶりにピアニストと共同の事業がしたくなったのさ。アジトの中に入れてくれ。私はチハルと違って臭くても気にならない」
ピアニストの頬がぱっと赤く染まった。しかし、怒りをこらえて涼しい顔を装う。
「今夜は飛鳥のために風呂をたてよう。しばらく裸の付き合いをしていけばいい」
「それはいいな。一晩なら付き合おう。ピアニストはずいぶん逞しい身体になった。裸を見るのが楽しみだよ」
飛鳥が言い返し、二人で大声で笑った。並んでログハウスに向かって歩き出す。日が陰った広場に不吉な風が渡っていく。

「邪悪な者よ、去れっ」
突然広場に大声が轟いた。ログハウスのテラスに黒い柔道着を着たオシショウが仁王立ちしている。
「去れっ」
再び声が響いた。シュータのメンバーが騒然とする。修太がテラスの前に走り、オシショウを守るように飛鳥とピアニストの前に立ちふさがる。右手の拳銃を握り締めて二人を見据えた。
「オシショウの言葉が聞こえたはずだ。飛鳥をログハウスに入れるわけにいかない。帰ってくれ」
飛鳥は修太を見ようともせず、テラスのオシショウに声を掛ける。
「ただの商談ですよ。行商人が来たと思えばいい。あなたとピアニストに商売の話がある」
意表を突いた飛鳥の言葉にオシショウが戸惑ったようだ。真っ白な髪と口を覆った長い髭が日に輝いて揺れた。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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