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9.強盗団(5)

「二人とも縄で縛り上げて木の下に立たせるんだ。二十四時間晒し者にする。夜も広間で晒す」
ピアニストが残酷に命じて訓練の再開を告げた。水無月と皐月はそれぞれ縄を持って、修太と睦月の後ろ手を高々と縛り上げる。二人を松の木の下に追い立て、首に巻いた縄を枝に掛けて吊した。皐月がテラスから洗濯用の竹竿を持ってきて二人の足元に置く。睦月を広場に向け、修太をログハウスに向けて立たせ、両足を大きく広げさせて足首を竹竿に縛り付けてしまう。余った縄をナイフで切り、口に噛ませて猿轡にする。凄惨な二十四時間の懲罰スタイルが完成した。素っ裸で両足を開かされた二つの裸身が、裏表になって人型に縛られて晒されている。睦月の目から悔し涙が流れた。ふっくらと盛り上がった乳房の上下に厳しく縄が走り、乳房の谷間で無惨にも一つに結ばれている。縄目から飛び出した乳房を涙が濡らす。涙は突き立った乳首の先にも落ちた。後ろ手に高々と掲げられた手首に手錠が食い込み、耐えられぬ痛みが襲う。裸の尻が止めどなく寒さに震えた。睦月の後ろで修太の逞しい尻も震え続けている。暖かいとはいってもまだ三月に入ったばかりだ。このまま数時間も放置されれば全身が凍り付いてしまう。素っ裸で縛られたまま凍死する恐怖が二人に襲い掛かった。


午後八時四十五分に、Mは食堂の隅で起き上がった。弥生が見つけだしてきてくれたタイメックスの燐光時計で時刻を確認する。これまで一緒に寝てきた弥生の姿はない。今夜はMと弥生も屋根裏部屋の見張りに参加することになっていた。修太と睦月が二十四時間の懲罰を受けているため人手が足りないのだ。弥生はすでに、七時から九時の見張りについている。九時から十一時までがMの担当だった。

昼と同様、穏やかな夜だった。天窓から明るい月の光が落ちている。Mは黒いトレーナーを着て、ベレッタを入れたフォルスターを左肩に吊る。イギリスにいるという祐子の織ったスカーフを首に結んで大きく伸びをした。二か月近く続いた毎日の鍛錬のお陰で体が軽い。テーブルの上のマグライトを取り、光を絞って左肩の上で構える。足元を照らしながら素早い身のこなしで壁際まで進み、静かにドアを開けて廊下に出た。フォルスターからベレッタを抜き、右手で構えて玄関に向かう。屋内をチェックするのも見張り交替の時の職務だった。玄関ドアに異常のないことを確かめてから、Uターンして広間に向かう。廊下に当てた光が反射して、突き当たりの広間がぼんやりと明るくなった。鉄棒に繋がれた二つの裸身が闇の中に浮かび上がる。後ろ手に縛られ、立ったまま晒された修太と睦月の悲惨な姿だ。互いの肌の温かさで寒さを耐えさせるため、鉄棒に吊った縄には余裕がある。足も縛られていない。絶え間なく足踏みをし、素肌を擦り合わせて暖をとっている姿が不憫でならなかった。Mは二人の縄目を確かめる職務を放棄して右手の狭い階段を上った。畳三畳ほどの狭い屋根裏部屋では、中央に置いた肘掛け椅子に弥生が座っていた。

「交替に来たわ」
声を掛けると弥生が白い歯を見せて笑った。南を向いた窓が開けられ、月の光が差し込んでいる。
「早いわね。退屈な仕事よ。夜は暗くて外の様子が見えないの。こうして窓を開けて聞き耳を立てていればいい。異常な音がしたら窓辺に行って双眼鏡でチェックするの。でも暗視装置が付いていないからほとんど見えないわ」
確かに開け放した窓の前にアルミの脚立が置かれている。Mは窓に近寄って脚立に上ってみた。外に身を乗り出してみても、向かいの山の稜線と月の光に輝く谷川の流れしか見分けることができない。確かに耳だけが頼りの退屈する仕事のようだった。二時間の手持ち無沙汰を思いやるとうんざりしてしまう。申し訳なさそうに弥生が声を掛ける。

「それでは交替をお願いするわ。椅子とテーブルは自由に使ってね。それから毛布もね」
「お休み、弥生」
「Mが帰ってきたとき私が眠てしまっていても、きっと起こしてね」
はにかんだ声で言って弥生が立ち上がった。静かに階段を下りていく。Mはテーブルの上にマグライトとベレッタを置き、椅子に深く座って毛布を身体に捲いた。五分も経たないうちに静寂に慣れた聴覚が麻痺して睡魔が襲ってくる。椅子から立ち上がって東側の窓へ行き、手を伸ばして窓を開けた。脚立を運んでいって高い窓からのぞくと広場が見渡せた。眼下には広間の前に張り出したテラスが見える。風のない穏やかな夜だが、南と東の窓を開け放したため外気が流れ込む。肩から毛布をかぶっても眠り込まない程度の寒さになった。再び椅子に座って十五分ほど経ったとき、裏口のドアが開く音を聞いたと思った。だが、厚い鉄製のドアが、たやすく外から破られるはずはない。耳に全神経を集めて様子をうかがうことにした。二分ほどして東の窓から小さな乾いた音が聞こえた。続けてまた同じ音が響いた。荒れ地に落ちた小さな小枝を踏み折る音だ。何者かが広場を歩いているに違いなかった。Mは立ち上がってテーブルの上のベレッタを握り、物音をたてないように脚立に上った。見渡した広場に人影はない。視線を落として真下を見ると、テラスの横の松の枝越しに二つの人影が見えた。青い月の光に浮き上がった二人は黒い服を着ている。人影は弥生とピアニストだった。口元まで上がってきた声を慌てて呑み込む。見てはいけないものを見たような、後ろめたい気持ちが込み上げてきた。脚立を下りて知らない振りをしようと思ったが、すんでの所で思い直す。下腹に力を入れてじっと二人を見下ろした。
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Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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