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8.新しい提案(4)

「とても行商人には見えぬ立派な風体だが、何を売りに来たのだ」
一息おいてから発せられたオシショウの声が、広場に満ちた緊張を解きほぐす。飛鳥の口に微笑が浮かんだ。
「世界のトップ・ビジネスマンの格好はこんなものですよ。商っているのは希望です」
「ほう、苦いか甘いか、とても食えた代物でないかも知れぬ。だが希望という商品を見るのもおもしろい。見せてもらおう」
オシショウの声で動揺した修太が身体を固くする。ピアニストが右手で修太を押し退け、飛鳥と並んでログハウスへ向かう。二人の後ろに弥生が続いた。Mも黙って従う。新しい展開についていけぬ修太たちが広場に残されてしまった。寒風に吹きさらされてたたずむ七人を、弥生が振り返った。
「さあ、新しいステージが始まるのよ」
凛とした声が七人の耳を打った。一様に肩を落として、若者の群が歩き始める。確かな滅びの匂いがした。Mは弥生の高揚した気分が伝染しないように、鎖をいっぱいに延ばして歩み続ける。肛門をなぶる鈍い痛みが冷静さを保たせることを願った。確かに新しいステージが開始される予感がした。しかし、邪悪な思想が大きく羽を広げ、空高く舞い上がる準備を始めたに過ぎない気もする。オシショウの鋭敏な神経は、その事実を見抜いたうえで野合する事を選んだのだ。古いものに愛着を寄せる修太たちを、Mはふと愛おしく思った。

ピアニストと飛鳥は並んで食堂に入っていった。弥生はMを従えてまっすぐ広間の窓辺へ向かう。
「少し早いけど、反省の時間にするわ。M、裸になるのよ」
広間の鉄棒の下に立った弥生が、極月に渡された鍵で二人の肛門栓を繋いだ鎖を外した。素早くトレーナーの上下を脱いで素っ裸になった弥生が、アタッシュケースから出した二本の手錠を持って促すようにMを見た。まだトレーナーを着たままでいるMの表情が曇る。
「食堂でなく、ここで反省するわけにはいかないの」
「何を言っているの。反省の時間だから食堂に行けるんでしょう。飛鳥という人の提案をぜひ聞きたいの。私はシュータの広報担当よ」
Mは黙ってうなずいてトレーナーを脱いだ。飛鳥に尻を掲げた裸身を見られたくないとは言い出せなかった。拘束具の鍵を預けられてから弥生は変わったとMは思う。信仰への自信に加え、組織の一員としての責任感がより強くなった。それもピアニストに偏っている。もはやピアニストを補佐する者は修太ではなく自分だと自負しているようだ。かろうじて懲罰を受けている負い目が露骨な行動を控えさせているにすぎなかった。

Mの両手首で手錠が鳴った。もう一つの手錠を受け取って弥生の両手を拘束する。再び二つの肛門栓を鎖で繋ぎ、弥生を先頭に食堂に向かった。奥のストーブを囲んで、飛鳥を真ん中にしてピアニストと修太が座っている。三人から少し離れ、赤々と燃えるストーブを背にした席にオシショウが座っていた。Mが後ろ手にドアを閉めた。冷え切った裸身を温かな空気が心地よく包む。オシショウを除く三人が目を上げ、入ってきた二人を見つめた。飛鳥の視線がMの全身を舐める。

「すごいね、M。四年前より引き締まった魅力的な身体だ。横のお嬢さんにも負けていない。山の中まで来たかいがあったよ」
飛鳥の感動の声を無視して二人はドアの横の壁に向かって並んだ。背中に張り付く視線を痛いほど意識しながら、Mは足を上げて手錠をまたいだ。大きく拡がった尻の割れ目に飛鳥の視線が食い込んでくるようで切ない。尻の下に手錠で繋がれた両手を回して正座し、反省のポーズを取った。二つの裸の尻が男たちに向かって並んだ。飛鳥の口から声にならない溜息が洩れた。

「目の保養に来たようだよ。Mの尻は凄い。すべてが丸出しだ。股が開ききらないようにリングで止めてあるのがユニークだね」
横に並んだ弥生が震える尻にそっと素肌を擦りつける。怒りを耐えよと伝えてくる。Mは裸身を赤く染めて飛鳥の言葉に耐えた。
「二人は自主的に懲罰を受けているだけだ。僕たちの規律は性的に動揺するほど甘くない。商談に入ってくれ」
ピアニストの突き放した声が部屋に響いた。弥生の緊張が緩む。ピアニストの声の一つ一つに弥生の身体は反応するのだ。
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Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
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