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9.強盗団(8)

屋根裏部屋の椅子にMは座っている。弥生とピアニストの性の営みを最後まで見届けてから十五分経った。今も興奮が残っている。美しく感動的な性だったとMは思う。Mが知ることのなかった昔ながらの官能を、弥生とピアニストが演じきったと思った。だが、滑稽なほど長い時間が流れたのだ。私なら退屈するなと思い。口元に苦い笑いが浮かんだ。素っ裸になって走り出したい衝動を必死にこらえる。ピアニストが見張りの交替に来るはずだった。階下の広間から物音が聞こえ、階段を上ってくる足音が響いた。ピアニストは五分の遅刻だ。

「M、遅れて悪かった。修太と睦月を縛り直すのに手間取ってしまったんだ。修太には手を焼かされる。懲罰中なのに睦月と楽しもうとしているんだ。もっとも二人とも後ろ手に縛られ、立たされているのだから惨めなもんさ。滑稽な情景だったよ。睦月が修太に背を向けて足を開き、腰を曲げて尻を突き出す。中腰になった修太が小さなペニスを尻の割れ目に沿わせて陰門を狙うんだ。思い通りにならずに肛門に挿入する。睦月は痛みに耐えきれず、泣きながら尻を振っている。それでも二人ともやめようとしない。あきれてしまったよ。これ以上変な気を起こさないように、睦月の股間を縄で縛ってやった」
Mを見下ろして、ピアニストがおもしろそうに遅刻の弁解をした。黙って聞いていたMの肩が落ちる。修太の話題に反応しないMをいぶかり、ピアニストが先を続ける。

「不思議だよな。二人とも縄を二重にして猿轡を噛ませてあるだろう。その縄の間から舌を出して、互いに舌を絡め合うんだ。股間を縛った腹いせなんだろうか。まったく理解できない。明日の訓練が心配だよ」
「私には二人の気持ちがよく分かる」

鋭く断言した声がピアニストの全身を打った。驚いたピアニストがMを見つめる。Mは毛布をはいで、ゆっくり立ち上がった。大きく胸を張ってピアニストの視線を受け止める。

「修太も睦月も、辛く、切なく、寒いから、お互いに寄り添う。寄り添った二人が官能を求め合うのに何の不思議もないわ。たとえ後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされようが、めげずに性に挑む姿は立派よ。官能の高まりにとって、定められた舞台など存在しない。自分に引き比べて判断するのはやめたがいいわ」

Mの目が燃えていた。ピアニストの背を寒い風が掠める。後ろめたさを隠そうとして視線を外す。寒そうに肩をすくめ、風の行方を振り返ってみた。風は南の窓から東の窓へと抜けていく。大きく開け放された東の窓の前に脚立が置き去りになっていた。ピアニストの表情がこわばる。

「おめでとう、ピアニスト。素敵な官能の世界を見せてもらったわ。あれがピアニストが待ち望んでいた性なのね」
背中でMの声が響いた。
「弥生ではなく、僕はMを抱きたい」
背を向けたままピアニストが言った。背筋がまっすぐに伸び、緊張した肩が上がる。真剣な声だった。静寂の中を風が渡る。
「機会があればね。でも私の趣味ではないわ」
Mがぽつんと答え、階段に向かった。ピアニストは肩を怒らせたまま、去っていく足音を聞いた。


Mはゆっくり階段を下りる。マグライトの光は足元を照らしている。ピアニストの求めを拒絶したのは、これで二度目だった。苦悩に歪む十八歳のピアニストの顔が闇の中に浮かび上がる。求められれば応えるのがMの生き方のはずだった。なぜ二度もピアニストを拒絶したのか分からない。甘酸っぱい味が口の中に拡がる。人を頼らず、自分の責任と人格で生きることを、Mが頑ななまでピアニストに望んだのかも知れなかった。まるで自分自身を見つめるように十八歳と三十歳のピアニストを見たのだと思い、闇の中でMは戸惑う。

階段を下りきると、右手の広間から苦しそうな呻きが聞こえた。修太と睦月を縛り直したと言ったピアニストの言葉が甦り、声のする方へライトを向けた。白い光の輪が二つの裸身を照らしだす。後ろ手に縛られた素っ裸の修太と睦月が首をねじ曲げて、互いの口を吸っている。二条の縄で口を割った猿轡の間から苦しい呻きが洩れた。二人の首に巻いた縄はまっすぐ上に伸び、鉄棒に縛り付けてあった。つま先立ちにならないと喉を絞められてしまうほどの過酷な吊りだ。睦月のふっくらした尻が苦しさに震えている。

Mは黙ったまま二人に近寄り、首を吊った縄を緩めた。ほっとした二人が一様に膝を曲げ、硬直した関節をほぐす。修太の股間で固く勃起したペニスがかわいかった。睦月の尻の割れ目には二条の縄がのぞいている。ほっそりしたウエストを縛った縄が臍の下で結び目を作り、まっすぐ引き下ろされて股間に食い込んでいた。Mは睦月の足元に屈み込んで無惨な股縄を解いてやる。縄の途中には大小二つの結び目がつくってあった。それぞれの結び目が陰門と肛門を割って体内に挿入されていたのだ。痛みに耐えかね、尻を振って身悶えしていた睦月の気持ちを考えると切なくなる。陰門に挿入されていた結び目はじっとりと濡れていた。温もりが残る縄がMの手に痛い。性を憎悪するピアニストの執念が悲しかった。立ち上がって修太の尻を手で打った。ピシッという小気味よい音が広間に響いた。冷え切った素肌の感触が哀れでならない。しかし、ピアニストが下りて来るまでの二時間は、凍えた身体と心を性で癒すには十分な時間だった。猿轡を噛まされた修太の口から低い呻き声が洩れた。熱く燃える目でMを見た後、修太は睦月の裸身に身体を寄せた。素っ裸で後ろ手に縛られた不自由な身体で二人一緒に官能の舞台に立つのだ。一人立ち去るMの後ろ姿を悩ましい喘ぎ声が追った。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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