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8.新しい提案(6)

「飛鳥、コスモスの本部秘書だったあんたが、なぜ武器商人になって強盗を勧めに来たんだ」
握った拳銃から目を離さずに、さり気なくピアニストが尋ねた。
「ご承知のとおり、社会を変革するはずだったコスモス事業団は解散した。ただのゲーム機屋になってしまったコスモスに私の能力を生かす場所はない。売り上げを伸ばすことだけに能力を使う毎日に耐えられなくなったのだ。私のプライドが許さない。有り余る能力とコンピューターを駆使して、不可能そのものに挑戦するシミュレーションを四年間考え続けた。今回の計画が一番スリリングで確実性がある。だが、残念ながら私には戦力がない。これも企画倒れで終わるかと諦めかけていたとき、追い詰められた組織が身近にいたというわけだ。私は金など要らない。一億円ももらえばいい。自分の能力が生きたことを実感できればそれでいいんだ。だから、あくまでも実行の責任はシュータに負ってもらう。私は陰に隠れた黒子だ。すでに指名手配の身になったシュータにとっては別に問題はないはずだ。すべてが終わったら私はアメリカにでも行くよ」

股間から様子をのぞき込むMは、きな臭いにおいを嗅いだ。飛鳥は責任のすべてをシュータに押し付け、一億円だけをもらうと言う。虫のいい話だった。六丁の凶悪な武器の存在だけが事実で、他はすべて作り話に思われた。しかし、チハルのいるアメリカに行きたいという話は、本音かも知れない。天窓から落ちる光が弱くなり、夕暮れが近付いていた。熱気の満ちた食堂に寒さが染み込んできた。
「飛鳥、今夜は泊まりだな。風呂でもたてよう」
黙ってベレッタをいじっていたピアニストが自分に言い聞かすように言った。修太と極月が顔を上げてオシショウを見つめる。二人の縋り付く視線を浴び、オシショウが目を開けて腕組みを解いた。
「確かに極月は臭う。風呂は必要だ」
素知らぬ顔で言ってオシショウが立ち上がった。ドアを開け放して廊下へ出る。極月の裸身が恥ずかしさで赤く染まった。


全員が一か月振りに風呂に入った。谷川から汲み上げてきた水を沸かした貴重な風呂だ。Mと弥生の入る順番は最後だった。小さなステンレスの湯舟の湯は膝のあたりまでに減り、濁ってもいた。窮屈な思いをして二人一緒に沈み込むと、やっと湯が胸まで上がった。それでも温い湯が全身をゆっくり暖めてくれ、生き返る心地がした。
「肛門栓を抜いてはだめかしら。せっかく、お湯で石鹸が使えるのだから清潔にしたいわ」
身体の芯まで温まったところで、Mが弥生に甘えた。
「そうね、違反だけれど、目をつむりましょう」
明るい声で答えた弥生が立ち上がる。洗い場で四つんばいになったMの尻から肛門栓が抜かれた。続いて弥生の栓をMが外した。開放感が全身に拡がり涙が出そうになる。十分に石鹸を泡立て、お互いの裸身を洗い合った。うれしいくすぐったさで二人とも笑う。懐かしい時が流れ、外は深々と冷えていった。

「弥生も強盗には反対でしょう」
再び湯舟に並んで浸かり、お互いの肛門に手を伸ばしてマッサージを続けながらMが尋ねた。答えが怖かったが尋ねないわけにいかなかった。Mの肛門を撫でる指先が止まった。沈黙が流れた。やがて力強く弥生の指が動き始め、リングで封鎖された陰門へと指が伸びた。静かな声が帰ってくる。
「分からないわ。私たちには滅びしか残されていない。どう滅びるかだけが問われているの。惜しまれるだけの滅びが迎えられればそれでいい。そのために資金がいるのなら、反対はしないと思う。まず私自身を鍛え上げる。そして組織を鍛え上げる。社会はその後になるわ。信じる道に必要とされれば、私はすべてを投げ出す」

また殉教者の声を聞いたとMは思った。耳を覆いたくなる。これほど近しく感じられる弥生がその一点で遠のいていく。だが、引き締まった裸身はMの素肌と触れ合い、指は陰部を這っているのだ。どちらが真実なのかとMは惑う。頬を涙が伝った。弥生の股間に伸ばした指が、すっと肛門に吸い込まれていった。終着駅だと思っていた山岳アジトから、もう少しだけ道が延長される予感がした。Mにとっても、弥生にとっても、踏み外したくないひとすじの道だった。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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