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7.もう一つの拉致(4)

会員ルームの間接照明が裸身を照らし出している。厚いカーペットの敷かれた床に、Mは素っ裸で正座している。黒い麻縄で厳しく後ろ手に縛られていた。名淵が口移しに飲ましてくれるシェリーの酔いが回り、妖艶とした白い肌が薄いピンクに染まっている。狭い部屋が濃厚な女の匂いで咽せかえりそうだ。名淵は黒い瓶から直接シェリーを口に含み、首縄で戒められたMの喉から口へと唇を這わす。そっと開けた口にMの舌が滑り込み、一刻を惜しんでシェリーを啜り合う。Mが身悶えする度に、縄目から突き出た乳房が名淵の裸の胸をなぶった。硬く張り切ったペニスが今にも暴発しそうになる。名淵は意地悪く身体を引いた。

「それで、どこまで話したかな。参ったな、Mさんが燃え上がったので忘れてしまった。とにかく、白いパジェロは学校から先では目撃されていない。たまたま、学校から五キロメートル先の街道で道路工事をしていた。片側通行止めになっていたんだが、そこも通り抜けていない。つまり、Mさんたちの住む蔵屋敷の沢と忍山沢、それから築三百年の屋敷のある沢の間で二人は車ごと消えてしまったんだ。県警の捜索は三日間行われたが、手掛かりはなかった。今日で大掛かりな捜索も打ち切りになったよ」
話し出した名淵が口をつぐみ、Mの顔をのぞき込んだ。聞いているかどうか気掛かりになったのだ。

「聞いているわ。やっぱり忍山沢と築三百年の屋敷があやしそうね。私も気が重くなるわ。ねえ、もっと重要な、秘密の発見はなかったの」
答えたMが、大胆に膝を開いて問い掛けた。名淵が素早く股間に手を伸ばす。愛液で濡れた陰部が指先を奥に誘う。
「実は、忍山沢の渓流に突きだした岩棚の上で、金のテニス・ブレスレットが発見された。小さなダイヤがたくさんついているやつ。それと同じ種類のブレスレットを、博子さんも持っていたらしい。まだ鑑定中だけど、間違いはないと思う。築三百年の屋敷の庭にも、結構新しそうな轍の跡が見付かったという。忍山沢から渓流づたいに山越えをすると、あの屋敷の前に出られるんだってね。明日二人でその屋敷に行ってみようよ。僕はぜひ、実際に見てみたい」

「あの屋敷には二十六年間、私は近付いたことがないの。気が進まないわ」
Mが不服そうに答えると、名淵の指先が身体の中に侵入した。
「さあ、僕は色仕掛けに負けてここまで喋ったんだ。今度はMさんの番だ。二十六年前、あの屋敷で何があったんだい。ほら、いい加減に白状するんだ」
Mの耳元をねっとりしたバリトンが掠め、指先が股間をなぶった。二本の指が陰部に侵入し、粘膜を責める。
「ヒッー」
思わず歓喜の喘ぎがMの口を突いた。
「さあ、何があったんだ。きっと今と同じようなよがり声を出したんだろう」
名淵の指が執拗に股間を責め、左手が乳首をなぶった。正座した尻が床に落ち、高々と背中に緊縛された両手が宙を掴んだ。
「そうよ、あなたと同じセクシーなバリトンが、私を官能の地獄に誘った。尻を、お尻を鞭で打たれたわ。死ぬほど打たれて、私は絶頂に登り詰めた。さあ、早く、鞭を振るってちょうだい。責め苦の中に燃え上がる真っ黒な炎を、もう一度見せてちょうだい。その漆黒の炎に導かれて私は生きたい」

Mの絶叫が終わると同時に鞭音が響いた。鞭先が鋭く空を切り、素肌を叩くかん高い音が連続する。呻きと絶叫が混じり合い、二つの裸身が入り乱れた。狭い空間はもう、凄惨な修羅場のようだ。二人の身体が空っぽになって肉に変わり、漆黒の炎がメラメラと燃え立ちそうになったとき、突然隣室の壁が震えた。一瞬二人の痴態が凍り付く。澄ませた耳に、連続して壁を蹴りつける音が伝わってきた。
「変態女め、恥を知れ。進太は今、死の迷路を彷徨ってるんだ」
遠く女の声が響き渡った。素っ裸の尻を掲げたMの脳裏に、傲然と修羅場を見下ろすチハルの姿が浮かび上がった。


進太は街道沿いの小さな退避場にゲレンデヴァーゲンを止めて清美を待った。街道から蔵屋敷に曲がる横道の手前、五百メートルの地点だ。通行車両に目撃される危険性は十分承知していたが、自転車に乗った清美の姿を確かめたい誘惑には勝てなかった。幸い山地では四輪駆動車は目立たない。黒塗りのボディも闇に溶け込んでいて好都合だった。またたきもせずにバックミラーに映る闇を見つめていると、自分が闇になったような気がする。もうじき、この闇から二度と這い上がれなくなる。進太はハンドルに置いた両手を強く握り締めた。気温は低くなってきていたが、両手はうっすらと汗ばんでいる。今夜の進太は黒いセーターにブラックジーンズを着ている。黒の全頭マスクやパンテイ・ストッキングを被ることも真剣に考えたが、銀行強盗と間違われそうなのでやめた。やはり、清美に好かれる格好にしなければならない。

左のフェンダーミラーにポツンと光る明かりが映った。進太は目だけに神経を集中して座席の中で身体を縮める。やがて明かりはバックミラーの中に入ってきた。星がまたたくように明るさが変化している。間違いなく自転車のランプだった。ペダルの踏み方によって光量が微妙に変わる。追い越される寸前に、進太はドアの陰に隠れた。急いで身を起こすと、白いダッフルコートを着た清美の後ろ姿が見えた。前屈みで懸命にペダルをこぐ様子がかわいかった。進太はきっかり五分間待ってからゲレンデヴァーゲンのエンジンをかけた。静寂を破る低いエンジン音が腹に響き、ヘッドライトの白い光が闇を切り裂く。余りにも目立ちすぎて、自転車に乗った清美を追尾することが無謀に思われてしまう。しばし考えてみたが、もう逡巡はできない。やるか、やらぬのかの二者択一でしかなかった。進太はもう逃げたくはなかった。思い切ってアクセルを踏むと、装甲車のような車体が軽々と発進した。
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Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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