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8.終焉(7)

「ダメッ、クロマル、やめるんだ、ダメッ」
命じた進太の声が震えていた。小さな岩棚の上に上半身を預けて倒れている清美に、なおもクロマルが吼えかかった。きつく両目を閉じた清美のまぶたが痙攣している。裸身全体が激しく震えていた。

「トラバサミを踏んだ拍子に倒れたんだ。大腿骨も折れている」
チハルの冷たい声が落ちた。
「ねえ、キヨミ先生を助けてやってよ。痛そうで見てられない」
青ざめた頬を震わせて進太が叫んだ。チハルは黙ったまま首を横に振った。清美は沢水を飲みに来るイノシシを狙ったトラバサミの罠にかかった。重い金属の歯は、きっと足首を砕いてしまっただろう。突然襲い掛かったショックと激痛で仰向けに倒れた。だが、後ろ手に縛られた清美はバランスが取れない。トラバサミに繋いだ鎖も足首を放しはしない。全体重が右足にかかり、脚をねじ切るようにして大腿骨が折れたのだ。命を助けるには救急車を呼ぶしかなかった。トラバサミを外して運び上げ、再び土蔵に監禁したとしても、処置しようがない。

「進太ちゃん、お願い。救急車を呼んで。お願いだから、私を助けて」
思いがけない大きな声が響いた。チハルと進太が揃って清美を見下ろす。清美は蒼白になった唇を震わせながら進太を見つめている。無惨に開いた股間で陰毛が風に揺れていた。もはや寒さなど感じる余裕もなく、小刻みに裸身を震わせているだけだ。眉間に寄せた二本の筋と、素肌に浮き出た脂汗が痛みの激しさを訴えている。
「キヨミ先生が泣いて頼んでいるよ。ねえ、チハルの携帯電話で救急車を呼んでやろうよ。放っては置けないよ」
進太が哀願した。大きな目から涙が溢れている。もちろん放っては置けない。トラバサミの罠を確かめに、いつ猟師がやってくるか分からないのだ。チハルは射殺することを決意した。肩に吊ったレミントンを下ろし、頬付けにして構える。狙いを付けられた清美の顔が恐怖に歪んだ。

「殺さないで、お願い、殺さないでください。片足がなくなっても恨みません。命だけは助けてください。お願いです」
裸身を震わせて清美が命乞いをした。縄目から飛び出た乳房がわなないている。
「ダメッ、チハル。撃たないで。先生を殺さないで」
進太が絶叫した。チハルが進太の目を見つめた。冷たい声で問い掛ける。
「そんなに少年院に行きたいのか」
問い掛けられた進太が驚愕する。
「えっ、チハルはどうなるの」
答えを保留して問い返してきた。

「私は絞首刑だ」
素っ気なく答えた。進太の顔が泣き笑いのようになる。
「イヤダ、そんなのは嫌だ。先生を殺してください。先生、これは安楽死です」
進太の叫びが谷間にこだました。同時に清美の裸身がのたうち回る。
「ヤメテッ、タスケテッ、あんたたちは人殺しよ。イヤッ、殺さないで」
痛みを忘れて叫び、のたうち回る清美を見下ろして、チハルが銃口を下げた。スーツのポケットから青い実包を取り出し、改めて薬室に入れる。
「肉の砕け散る散弾は使わない。一発で殺してやるよ。美しい肉体への、私なりの情けだ。進太は人を殺す瞬間を目を開いてよく見なさい」
独り言のように呼び掛けてから、チハルが引き金を引いた。かん高い銃声が響き渡り、清美の胸に大きな穴が開いた。多量の血が流れ出し、白い裸身を真っ赤に染める。横にいる進太が口を押さえてしゃがみ込み、全身をひきつらせて嘔吐した。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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