2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

7.もう一つの拉致(7)

「先生、無理をしちゃだめだよ。追突の時に、きっと軽い脳震盪を起こしたんだ。側頭部に大きな瘤ができていたよ。楽にしていた方がいい」
無邪気な言葉が清美の怒りに火を点けた。もう、事実を認めるしかなかった。
「進太ちゃん、何を言うの。先生にこんな乱暴をして。もう、ただでは済まないわよ。早く縄を解きなさい。できるだけ穏便に済ますから、悪質ないたずらはやめなさい」
叱責の声を進太は平然と聞き流した。清美も意外に無能な女だと思った。
「決していたずらじゃないですよ。どう見ても立派な暴力です。僕は先生に説得されて、補習の約束をしたけれど、やはり嫌になりました。だから、約束した相手のキヨミ先生を、消しゴムで消すことに決めたんです。ここで監禁することにします。つまり、外の世界では先生は消えてしまう」
倒れ伏した清美の裸身に、進太の無表情な声が落ちた。清美の背筋を恐怖が貫く。狂気としか思われない言葉だった。大声が口を突いた。

「なんて馬鹿なこと言ってるの。監禁ですって。私を消してしまうですって。戯言を言わないで、現実を見なさい。たかが補習の講師になりたくないからと言って、教師を監禁する馬鹿がどこにいますか。それも先生を裸にして辱めるなんて聞いたこともない。今なら許します。早く縄を解きなさい。お願い、進太ちゃん、早く冷静になって」
「冷静になった方がいいのはキヨミ先生ですよ。僕が取り返しのつかない道を選び取ったことを、先生は理解すべきだ。たとえいくら不合理でも、現実は現実として認めるべきなんです。それに、監禁にはそれなりのマニュアルがあることも知っていた方がいい。素っ裸にして拘束するのが監禁の原則です。もっとも、僕はチハルとは考えが違うから、先生が素直になりさえすれば、週に一度は服を着せます。シャンプーも行水も認めますよ。何と言っても先生は一生、ここで僕と一緒に暮らすんですから。さあ、そろそろ立ち縛りにしますよ。それとも隅にあるバケツで小用を済ませてからにしますか」

進太の声が終わると同時に、清美の怒りが消え失せていった。進太は完全に狂気に取り付かれてしまったと思った。居たたまれない絶望だけが清美をさいなむ。悔しいことに尿意も襲ってきた。冷たさが下腹部を責める。だが、進太はバケツを使って小用を足せと言ったのだ。真っ黒な絶望が襲い掛かり、目の前を死が掠めた。舌を噛みしめた歯に力を込める。舌の痛みが全身に伝わり、素っ裸で舌を噛んだ死に様が脳裏に浮かんだ。犬死にを絵に描いたような滑稽な死だと思った。その時、啓示のように内なる声が響いた。「狂気は必ず隙を見せるはずだ」と声は告げた。すんでの所で清美は歯の力を緩めた。初めて希望が見えたような気がした。妄想のような希望だったが、清美はその希望を信じた。狂気に捕らわれた教え子の隙を勝ち取れなければ、教師として生きてきた値打ちが無いと確信した。ましてや、教え子に責められたくらいで自殺するのは笑止の沙汰だった。これは形を変えた学校暴力に過ぎないと、必死に思い込もうとした。

清美は歯を食いしばって立ち上がり、胸を張って進太に小用を要求した。差し出されたバケツの上に堂々と屈み込んだ。素っ裸で後ろ手に緊縛された背筋を伸ばして、真っ正面から進太を見上げた。教育者の力で何とか恥辱に打ち勝ちたいと願ったが、恥ずかしさで全身が赤く染まる。裸身がぶるぶると小刻みに震えだした。思い切って両膝を開き、進太の目に股間を晒す。歯を食いしばって放尿した。だが、長々と続く放尿がたまらない屈辱を呼び覚ました。清美は肩を落として顔を伏せ、さめざめと泣いた。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

最新記事
カレンダー
01 | 2012/02 | 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 - - -
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
free area
人気ブログランキングへ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR