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3.拉致(7)

「さあ、ぐずぐずしないで足を持つの」
手に持ったナイフを博子の顔に向けてチハルが命じた。一瞬足がすくんだ博子が諦めた顔で屈み込み、二つに裂けた死体の両足を持った。チハルは無造作に両脇に手を回して死体を持ち上げる。チハルの腰の高さまで持ち上がった死体をパジェロのリアゲートに押し込もうとした瞬間、死体の背骨が大きい音を立てて折れた。両足を持って顔を背けていた博子が、チハルの動きについていけなかったのだ。チハルの両手に上半身の重みが全部掛かった。足を踏ん張って堪えようとしたとき、川底の水苔で靴が滑った。チハルは仰向けに渓流に倒れる。頭から水没し、視界が途切れた。水を吸い込んで咽せながら博子の攻撃を覚悟した。素早く水中で横に転がり、腰のナイフを引き抜いて構える。水で揺らめく視界に、ぽかんとした顔で立ちすくんでいる博子が映った。口元に笑みを浮かべている。無能な女の前で身構えた自分が恥ずかしくなってしまう。今度は二つになった死体を慎重に持ち上げて一人で荷物室に積んだ。びしょぬれになった野戦服が肌に張り付いて不快だった。腹立ちをあらわにして運転席に乗り込むと、博子が慌てて助手席に座った。岩場で拾い上げた二人の衣服も荷物室に積み込み、渓流を後にして林道に上がった。ゲレンデヴァーゲンの前の林道の中央にパジェロを止めて、エンジンを切った。

「ここから博子が運転するんだ。二十分ほど坂道を上ると砂防ダムに出る。ダム湖の奥まで行ってから車を止めるの。道は一筋だから迷うことはない。後から私が続いていることを忘れない方がいい。分かったかい」
博子の横顔を見つめて告げると、大きくうなずき返してきた。やっと一人になれ、自分のパジェロをまかされるうれしさが全身に滲み出ている。危険な兆候だった。だが、他に方法はない。パジェロで一緒にダム湖まで行き、帰りの一時間を歩く気にはなれなかった。すでに人目が無いことに賭けているのだ。今更、些細な危険を避けるには一切が遅すぎた。チハルは博子の目の前でレミントンM1100に五発の実包をゆっくり装弾して威嚇する。
「いいね、変な素振りが見えたらすぐ銃撃する。私がホーンで合図してから発車するんだ」

博子が大きくうなずくのを確認してから路上に降り立ち、ゲレンデヴァーゲンの横に立った。パジェロのリアウインドウから運転席に移る博子の裸身が見えた。チハルは急に濡れそぼった野戦服が気になる。白い本皮シートを濡らすのもいやだった。服を脱いで裸になることに決めた。レミントンをゲレンデヴァーゲンに立て掛け、無造作に幅広いベルトを外して、上着を脱ぎ去る。黒いタンクトップも濡れていた。迷いもなく脱ぎ捨てると、引き締まった白い胸があらわになった。盛り上がった乳房の上に細かい水滴が浮いている。続いてズボンを脱ごうとした。裾をジャングルブーツに潜らすのに手間取っていると、パジェロのエンジン音が鳴り響いた。バックミラーで服を脱ぐ姿を見つめていた博子が、チハルの隙を突いたのだ。両足首まで下ろした濡れたズボンのお陰で、チハルは両足を縛られているのと同じだった。無様に尻を後ろに突きだし、両手でズボンの裾を引っ張っている。しまったと思った瞬間タイヤが鳴り、パジェロが発進した。チハルの口に苦笑が浮かぶ。やっと脱ぎ去ったズボンと上着を丸めて素肌の水滴を拭ってから、運転席に座った。慎重にシートベルトを装着してハンドルを握る。アクセルを踏み込むと力強くタイヤが路面を噛んだ。うねうねと続く坂道を十分ほど走ったころ、前方のカーブに切り込んでいくパジェロのテールが見えた。やはり博子の運転は下手だ。追いつくのは簡単だった。チハルが唯一怖れたのは博子が車を捨てて山に逃げ込むことだった。だが、町育ちの博子に素っ裸で山に分け入る勇気はない。後は事故を誘発させないように注意して、ゆっくり追尾して行くだけだった。

やがて沢の前方に、コンクリートで固めた砂防ダムの堰堤が見えてきた。道は大きくカーブしてダム湖の左岸に回り込む。左側は鬱蒼とした広葉樹林が黄色くなった葉を広げている。右側は切り立った崖で、三メートル下に黒々とした湖水が広がっていた。パジェロは直線に近い道を、スピードを上げてダム湖の奥に進む。だが、空しく急停止するブレーキ音が静けさの中に響き渡った。ダム湖に開いた道の先は赤い車止めで閉じられていた。ダム工事のための取り付け道路が終点のダム湖で途絶えたのだ。ゆっくり追尾していたチハルも、笑いを浮かべて停車した。悔しがって歯ぎしりする顔が見えるようだ。シートベルトを外そうとすると、五メートル前で止まったパジェロがいきなりバックしてきた。追突の衝撃がチハルを襲った。シートベルトが素肌に食い込む。必死にブレーキを踏み込んでパジェロに抗う。諦めたようにパジェロが前進する。再びバックして追突してきた。今度の衝撃は弱い。チハルもアクセルを踏み込む。二台のエンジン音が轟いたが、ゲレンデヴァーゲンが勝った。パジェロのエンジンが止まり、じりじりと後退していく。ついに車止めまで追い詰められたパジェロの運転席が開き、博子が飛び降りて走り出す。続いて車を降りたチハルの裸身が後を追った。山に逃げ込もうとする寸前で博子に追いつき、大きな尻をジャングルブーツで蹴り上げた。ひとたまりもなく裸身が倒れ伏す。淫らに上下する白い尻をチハルが無慈悲に踏みにじった。博子が悲鳴を上げる。
「ごめんなさい。二度としません、殺さないで、ねえ、殺さないでください」
鳴き声で訴える博子を荒々しく引き起こし、ゲレンデヴァーゲンのリアゲートの前に追い立てていった。

「縛り上げるしかないようね。これから山を下りるんだから、反抗できないように厳重に縛る。さあ、背中に両手を回しな」
荷物室のコンテナから取り出した麻縄を持って、怖い声でチハルが命じた。博子が震える手を背中に回す。ざらついた縄の感触が博子の素肌を縦横に這った。菱縄後ろ手縛りに緊縛されたふくよかな裸身が、厳しい縄目に泣く。股間を縦に縛った二本の縄が性器を挟んで厳しく陰部に食い込んでいた。股が切れる恐怖で博子は身動きもできない。
「荷物室に上がって胡座をかくのよ。早くしないとその格好で殺す」
威嚇の声に急かされて、博子は縄目の痛みに泣きながら荷物室に上がった。チハルが狭い室内で無理に胡座をかかせる。交差した両足首を縛り上げ、伸ばした縄尻を首の両脇を通して後ろ手に繋いだ。ゆるい海老責めにした裸身を点検してからリアゲートを閉めた。なぜ博子を殺さなかったのかチハルにも分からない。関係が深まりすぎて殺せなかったのかも知れないし、生け捕りにした獲物をこれから会う進太に見せたかったのかも知れなかった。どちらにしろ危険なことに変わりはない。しかし、チハルはもう三人の命を奪っていた。これ以上危険なことがあるなら体験してみたいとさえ思う。たまらなく荒んでいく心が愛おしくてならなかった。引き締まった小柄な裸身を秋風が渡っていった。
チハルは後部が潰れたパジェロを崖っぷちに引き出し、ゲレンデヴァーゲンで押し出してダム湖に突き落とした。そのまま元来た道を下って渓流を遡航し、築三百年の屋敷がある谷間へと続く山越えの林道に入っていった。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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