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- 2011/04/06/Wed 15:00
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- 第4章 -卒業-
会員制クラブ・ペイン・クリニックは、畳二十畳ほどのこじんまりとした造りだった。
赤と黒で構成されたインテリアはサロン・ペインと同様だ。正方形に近い室の二面の壁には、大きな鏡がはめ込まれている。入り口のある壁面には、横にバーのカウンターが通っていて、様々な酒瓶が並んでいる。室の中央に高さ五十センチメートルほどの、黒く塗った大きな舞台があった。外車のショールーム用に使えるほどの広さがある。高い天井からは、照明灯の他、チェーンやスチールパイプなどの異様な装置が垂れ下がっている。
舞台を取り巻く形で、二十脚ほどの座りやすそうな椅子が配置してあった。室の明かりは間接照明で、豪奢な雰囲気を演出している。
車椅子に乗ったバイクが、ママと天田の手で持ち上げられて舞台に上げられた。
ピアニストが壁のスイッチを操作し、舞台の上を上品に照明する。舞台上の人物に嫌な影が差さないように工夫された、高度な照明だった。客席は、辛うじて本が読めるほどの照度だ。
Mは、二面の鏡に向かい合う一番外側の椅子に腰を掛けた。すかさずカウンターから出てきたチーフが、ハイネケンとグラスを乗せたトレーを持って来て、椅子の肘掛けの上に載せた。
「マティニはつくっていられそうにないわ。ビールで我慢して。それからM。下手な演技でも笑わないでね」
にっこりと笑い、片目を瞑って見せてから舞台の方に歩み去った。
「嫌だよ俺は、」
舞台の上から、バイクの力無い声が響いた。
Mの位置からは、車椅子の側面が見える。左の鏡に、正面を向いたバイクの固くなった顔が映っていた。ピアニストと天田が、バイクの前の床に立ったまま並んでいる。頭の位置がちょうど、舞台に上がった車椅子のバイクの顔と同じ高さにある。
「下ろせよ」
大声を上げたバイクの両手を、ママが背後から捉え、後ろ手にして銀色の手錠を掛けた。
予想もしない成り行きに、バイクが大きく身じろぎしたが、もう遅かった。大声で悪態をつくバイクを尻目に、ママが舞台を降り、ナースが代わって舞台に上がる。
右手に持った小さなナイフの刃が、照明を浴びてきらりと光った。
無造作にバイクに近付いたナースが、無表情な顔で屈み込み、グリーンのトレーナーの襟元にナイフを当てた。そのまま慣れた手つきで裾まで一気に切り裂く。
顔を真っ直ぐに上げて、固く目を瞑ったバイクの胸から腹が露出した。女のように白い肌が、照明を浴びて柔らかく光っている。
ナイフの刃先が複雑に光り、トレーナーが縦横に切り裂かれた。残った布きれがバイクの背から素早く取り去られる。
バイクの上半身を裸に剥いたナースは、休む間もなくバイクの腰からベルトを抜いた。今度は白の作業ズボンを切り裂く。
素っ裸にされて車椅子に座るバイクの上半身は、思ったよりしっかりとして立派だった。腰から下の筋肉の落ちた下半身がよけい無様に見えてならない。目を被いたくなるようなコントラストだった。貧相な股間で陰毛に埋まり、萎びきったままのペニスが無惨だった。
「目を開けなさい」
車椅子の上で悲惨な裸身を晒したバイクに、ナースが低い声で命じた。
全身を固く引き締めたバイクが、思い切って目を開いた。目の前の鏡を、大きく見開いた瞳で見つめる。
五年振りに見る、鏡に映った自分の裸身だった。思わず涙が頬を伝った。やり場のない怒りと悲しみが交互に全身を襲い、裸の肌が刺されたように、寒さで痛んだ。ついで、恥ずかしさが込み上げ、全身が熱く火照ってくる。目の前に立ったピアニストと天田の目に蔑みの色を見た。熱い。
「バイクだけが裸では可哀想ね。チーフ、裸になりなさい」
いつの間にか舞台の端に上っていたチーフに、ナースが冷たく声を掛けた。声に促されて、バイクの前に立ったチーフが、恥ずかしそうに白いシャツとパンツを脱ぐ。パンツを脱ぐときには艶めかしく腰がくねった。