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6 祐子の見聞録(2)

一際大きく雷鳴を轟かせた後、速い速度で雷雲は遠ざかっていった。
明るさの戻った窓辺に、急に温気が満ちる。
祐子は長い髪を振って、黒のショートパンツとタンクトップを脱いだ。スリムな裸身が、明るさを取り戻した窓からの光に揺れる。

突然、リビングの電話が鳴った。
裸のままエアコンの効きが良いリビングに入り、受話器を取る。汗ばんだ肌が冷気に反応し、全身の肌が緊張する。バイクに剃ってもらったきりの陰毛が、いがぐりのように太股を突いた。

「サロン・ペインですが、バイクはいます」
女性の落ち着いた声が受話器に流れた。背筋が思わず緊張する。
「掛け間違いではないですか。ここにバイクはいません」
どぎまぎしながら、月並みな対応をしてしまった。
「いいえ。掛け間違いではないわ。この間、二階のクラブに見えたお嬢さんでしょう。確か祐子さん」
「はい、」
返事をしたまま、祐子は様子を窺った。
「あれからずっと、バイクは予約通り毎週末、店に来ていたのよ。それが前回から連絡もなく休んでいるの。今日も、時間になっても来ない。あなたなら何か事情を知っていると思って電話したの。迷惑だったかしら」
「申し訳ないけど。言っている意味が分かりません。予約って、何の予約なんですか。テーブルの予約ですか」

官能を追い求めるバイクの切羽詰まった姿が瞼に浮かんだが、口を突いた答えは素っ気なく、嫌味なものだった。少しでもバイクのことが知りたいのに、まったく嫌になってしまう。
「ごめんなさい。バイクが祐子さんのことばかり気にしていたから電話したの。何も知らないとは思わなかった。忘れてください」
電話が切られる気配に、祐子がうろたえた。まったく根性無しだと、我ながら思う。

「待ってください。ずっと旅行中だったので、戸惑ってしまって。こちらこそ誠意が無くて、ごめんなさい」
祐子の縋り付くような声に応えて、受話器の向こうでフッと息を吐く音がした。
「ご迷惑でなかったら、お話を伺いたいの。これからお店に行っていいですか」
返事のない受話器に、痛いほど耳を付けて待った。
「いいわ。今、次の人が入っているから、一時間後に来て」
事務的に応え、電話が切られた。病院の受付で嗅いだ消毒薬の匂いが、記憶の底からわき上がってくる。
祐子はそのままバスルームに向かった。約束の時間までに、汗を流す時間は十分にある。久しぶりに、伸びた陰毛を自分で剃ろうと思った。
気合いを入れて、後ろ髪を引かれる思いで後にしたサロン・ペインを、再訪しようと思ったのだ。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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