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9 五年遅れの卒業(1)

日射しは消えていたが、西の空は十分明るい。
町並みが続く果て、水瀬川の向こうに落ちた夏の日の名残を正面から浴びて、校舎の屋上にいるバイクの全身が赤く染まっている。
蒼白な顔に反射する赤い光が、玉の汗を美しく彩る。両腕に力を込め、肩の筋肉を盛り上がらせて、バイクはフェンスの金網をよじ上る。

腕を交互に持ち上げる度に、曲がったままの両膝が揺れた。指に食い込む金網が痛い。フェンスの高さは二メートルはあった。
やっとの事でてっぺんに渡した鉄パイプにぶら下がり、力を込めて懸垂した。全身から汗が噴き出す。

ようやく屋上に巡らせたフェンスから上半身を乗り出したが、反対側に下りる術がない。足で跨ごうとしても、不自由な下半身が冷たく無視する。
仕方なく、乗り出した胸元の下に両手を伸ばし、きつく金網を握りしめた。歯を食いしばり、上体にすべての力を集中し、鉄棒の逆上がりの要領で回転した。身体は上手く回ったが、金網を握りしめたまま返せない手首が、全体重を受けて激痛に泣く。とっさに両手を放し、落下する直前に体を捻って金網に縋り付いた。

背筋を恐怖が突き抜け、冷や汗が流れた。気持ち悪く揺れる下半身をフェンスに押し付けて揺れを防ぐ。首を曲げて地上を見ると、二十メートル下のキャンパスが静まり返っている。ちょうど真下に、置いて来た焼酎の瓶が小さく見えた。まだ落ちるわけにはいかない。

やっとの思いで屋上の端に腰掛け、背をフェンスに預けて一息つく。しかしゆっくり休んではいられない。右手に巻いた腕時計は六時二十分を指している。後十分しかないのだ。
バイクは、紫色に染まった西の空を見つめた。

地上近くにたなびいた雲が茜色に染まっている。豪奢な黄金色に包まれたいと思ったが、日を変えることなどできない。
一切を受容するのだと思いを固め、じっと瞑目する。
身体に張り付いた小さすぎる上着が暑苦しかったが、すぐに気にならなくなった。バイクが入学した年一杯で廃止になった、高等部の制服だった。制服嫌いだと思っている祐子に、ぜひ一度、制服姿を見せたいと思ったのだ。

身体をゆったりとフェンスに預け、大きく息を吸った。静かな呼吸に合わせ、大空に飛び立って行く自分の姿が脳裏に浮かぶ。これがいい。
バイクは焦点を絞り、瞼の裏にイメージを投射させる。

今の姿のままのバイクが、薄暮の空間を紫に輝く西の空目指して、飛び立って行くのが見えた。飛翔する姿は車椅子の上になく、ポッカリと宙に浮かんでいた。曲がったままの膝と貧相な下半身が、回復しない歩行を思い出させる。しかし、その全身は自由を謳歌している。軽くなった心が、思い通りにならない肉体と悩みを、そっと宙に持ち上げてくれたのだ。ただ、有り余る夢の過剰が、下半身に重く垂れ下がっている。ああ、もっと自由になりたい。もっと、もっと。

こみ上げる願いがペニスの先に集まる。既に分かり切っている官能の回路を伝い、一切の欲求が解き放たれ、奔流となって一点に集中する。
萎びきったペニスの奥で、素っ裸のまま後ろ手に縛られ、大きく股間を広げた祐子の顔が笑っている。剃り上げられた陰部で性器が震え、肛門が喘いだ。

「ありがとう」と万感の思いを込めてつぶやくと、ペニスの内部が沸き立ち、見る間に膨張する。
猛々しく勃起したペニスにたまらない満足を感じ、バイクは目を開き股間を開けた。
黒々とした陰毛の間から屹立したペニスが、頼もしいまでに反り返って輝いている。バイクの全身がうれしさに戦く。もう、すべてが許されたと思った。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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