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10 みんな闇の中(2)

赤と黒を斜めに染め分けたサロン・ペインの看板灯の前に、祐子とチハルはオートバイのエンジン音を轟かせて乗り付けた。
看板灯には明かりが点っていなかったが、構わずドアの前に進む。
「凄いな後輩。中等部の制服でこんな店に入るのかい」
「Mが先に来ているのよ。MG・Fが止まっているでしょう」
赤いオープンカーを見たチハルが口笛を吹いた。
「祐子は本当に命門の中等部なの」
「間違いないわ。さあ、入りましょう」
「最高に楽しいよ。補習をサボって正解だった」
祐子に続いてドアを入ったチハルが、楽しそうに白い電話を叩いた。

自動ドアを通って店内に入った祐子が、呆然として立ち止まる。後に続いたチハルが荒れ果てた店内を見回し、また口笛を吹いた。
「スゲーヤ。やくざの喧嘩でもあったのかな。それにしても酒臭くて咽せかえってしまう。煙草に火を点けたらきっと爆発するよ」と言っておどける。
カウンターの壁を飾っていた三面の大鏡はすべて砕け散っていた。スツールが散乱し、フロアーのそこかしこに割れた酒瓶が転がっている。

「いらっしゃい。あいにく散らかっているけど。よかったらゆっくりしていって欲しいな。祐子」
背後のピアノの下から声が掛かり、二人が振り返ると、立ち上がったピアニストが微笑み掛けた。
笑い顔を見て緊張が解けた祐子が、ピアニストに挨拶する。
「今晩は、ピアニスト。この有様はひょっとしてMの仕業なの」
「僕も来たばかりで、詳しくは聞いていないんだけど、Mとチーフの共同作業らしいよ」
「Mは何処にいるの」
「みんな二階のクラブにいるよ。でも、行かない方がいい」
「行っては、いけないってこと」
「いいや、構わないけど。きっとびっくりする」
「もう慣れたわ」
「そう。変わった色の制服を着ているから、別に祐子の言葉を疑りはしない」
「バイクの血よ。死んだバイクが私と一緒に来たと思って」
ピアニストは何も答えない。祐子を見た目に悲しみの色が浮かぶのが分かった。しかし祐子は、同情も蔑みも拒んだ。

「こちらはチハル、私の先輩。こちらはピアニスト、名門学院出身の医者の卵」
静かな声で、ピアニストにチハルを紹介した。
「今晩は先輩、初めまして。後輩の祐子に、変わった先輩ばかり紹介されて光栄です。でも一人はもう、頭が半分潰れていた。やはり生きている方が素敵です」
興奮した声で挨拶するチハルに眉をしかめ、軽く頭を下げたピアニストは、ゆっくりピアノの前に座った。二人には何も答えず、ぽつりと「ピアノが無事で良かった」とつぶやき、鍵盤に両手を載せた。

指先から「エリーゼのために」が流麗に流れ出す。
「二人の素敵な後輩のために」
ピアニストの気障な台詞とピアノの調べを背に、二人は赤いドアを開けて階段を駆け上って行った。


二階のクラブのドアを開けて中に入った二人は、そのまま立ちすくんでしまった。
「スゲーヤ」
またチハルが口を鳴らし、下品な言葉をつぶやく。
目の前の舞台の上二メートルほどの高さで、二つの剥き出しの尻が宙に浮かんでいる。縄で縛られた両手首と両足首を一つに合わせて、吊り下げられた素っ裸の女が二人、後ろ向きに並んで宙で揺れているのだ。

尻の上に続く二本の足は、それぞれ上に伸ばされた左右の手と一緒に足首できつく縛られ、まるで裸の蓑虫のように天井から吊り下がっている。
同じように剥き出しにされた二人の女の尻だが、その形はずいぶん違っていた。
一つは奇麗な丸みを持った豊かな尻で、白桃のように開いた深い尻の割れ目の奥に、燃え上がる陰毛に包まれ、ひっそりと息づく陰部を覗かせている。陰惨に吊り下げられたMの尻に違いなかった。豊満な裸身が意識をなくした物体のように力無く宙で揺れている。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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