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4.突然の招き(1)

窓のない部屋なので、日の移ろいは分からない。
ベッドサイドのテーブルに置いた時計が、午後一時に近いことを知らせている。

「こんなにゆっくりしたのは本当に久しぶりよ。私も飲食業に転職しようかな」
ダブルベッドの背に半身をもたせ、胸まで毛布を引き上げた格好で、Mとチーフは並んでコーヒーをすすっていた。
「これで結構身体はきついのよ。夜は遅いし、ゴミ出しの朝は早く起きなければならない。毎日昼過ぎまで寝てられるわけじゃないわ」
のんきなMの言葉に抗議するように、毛布からこぼれた小振りの乳房を震わせてチーフが言った。
「ごめんなさい。チーフの職業を軽んじたわけではないの。あなたのお陰でリラックスできたことがうれしかったの」
「私こそ生き返るようだったわ。あんなに優しくしてくれて、M、本当にありがとう」
チーフが鼻をすすりながら、泣き出しそうな声で答えた。

心地よくベッドに足を投げ出していたMの身体に、また疲労が戻ってくる。昨夜の親密すぎる官能が甦り、下半身が気だるい。やはり、チーフと比べ年齢を重ねすぎたせいだろうかと思い、Mは両肩を落とした。心なしか、豊かな乳房の張りも衰えてしまったような気がする。もうしばらくしたら、私は老いた肉体を恥じるようになるのだろうか。

無言の問いに答える者はなく、突然鳴りだした電話をチーフが取った。
「Mによ、チハルから」
チーフが一言も話さないまま、怪訝そうな顔でMに受話器を手渡す。
「こんにちは、M。それともまだ、おはようなのかな。どちらにしろ、私の予想通り、チーフと裸を見せ合っていたらしいね。受話器を通して、尻のにおいが漂ってくるよ」
「おはよう、チハル。連絡先を告げるのが遅れてごめんなさい。当面サロン・ペインを連絡先にするから、よろしくお願いします」
意地悪な言葉を無視して、Mが事務的に応えた。

「だから連絡している」
鼻で笑うような声でチハルが即答した。
「私はMと違って、もう仕事をしているんだ。理事長が、今日の午後会いたいと言っている。ご都合はいかがですか」
一瞬Mは言葉を失った。不意の仕事に対応できなければ、ビジネスをしているとは決して言えない。
「お任せします。私はいつでも出掛けられるわ」
「それでは、十分後にお迎えに上がります。理事長は待つことが嫌いですから、そのおつもりでどうぞ」
切られる寸前の受話器にクラクションの音が入った。チハルは携帯電話でかけてきたにちがいない。してやられたと思った。きっと、これから理事長に日程の変更を報告するに違いない。運良くMを捕まえたことで、勝手に理事長の予定を書き換えるのだ。チハルの意地悪も極まったと思う。しかし、これはビジネスなのだ。負けるわけにはいかなかった。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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