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8.試練(3)

「さあM、寝室においで。金庫もそっちにある」
Mの書いた領収書を大事そうに文箱にしまってから、先生が立ち上がって促した。隣の室に通じる両開きの引き戸が開けられると、暗い方形の室の中央に置かれたダブルのロー・ベッドが真っ先に目に映った。先生は壁のインバーター・スイッチを調整して、新聞の見出しが読めるほどの光量に間接照明を調整した。南側の腰高窓の上でエアコンの微かな音が響いている。窓は隣の事務室と同様、ステンドグラスがはめ込みになっていたが、図柄は豊満な西欧の裸婦だ。事務室の聖母マリアとは対照的だった。先生がベッドの上にビニールシートを拡げた。Mは命じられるままベッドに上がり、シートの上に正座した。マホガニーの頑丈な枠に載せられたマットレスは極めて固い弾力だった。高価なスプリングの動きが素肌に伝わってくる。

「高い買い物だったが、やっと使うことができる。楽しい夜になりそうだよ」
生き生きとした表情で剥げ頭を輝かせた先生が、部屋の隅の棚からSM用品の入った袋を取ってMの前に置いた。
「さあ、一晩お世話になる品を膝の前に並べるんだ」
命じられたMが袋から婆さんたちの自信作を取り出す。柔らかな黒革を縫製した乳房強調拘束具、口枷、手枷、足枷、膝枷。最後に肛門調教具とT字帯が膝の前に並んだ。婆さんたちの内職現場で見たときとは違い、いずれも凶々しい光を放っている。自分の身体を拘束する器具を並べる情けなさに、つい眉をひそめてしまった。目ざとく表情を読んだ先生が口元に笑みを浮かべた。

「おお、そうだ。領収書だけ書かせて金をやらぬのでは詐欺になるね。すぐ十万円を支払おう」
うれしそうな声で言って、先生は部屋の北隅に置いた金庫の前にしゃがみ込んだ。金庫は小さな冷蔵庫ほどの大きさがある。何回もダイヤルを回したあげく、小さな金属音と共に錠が外れた。金庫の中を見せ付けるように扉を大きく開けた。厚さ十センチメートルほどの札束が三つ並んでいる。先生は三千万円もの大金を部屋に置いているらしい。一つの札束の上から十枚の札を数え、そのまま手に持って戻って来た。金庫の扉は閉めようとしない。金の力をMに見せ付ける気のようだ。

「十万円だ。この札が身体を買うんだ。ちゃんと渡すぞ」
先生が厳しい声で言って十万円を手渡す。素っ裸のMにしまうところはない。身体を売った屈辱だけが札から伝わってきた。仕方なくベッドの横のテーブルの上に置いた。落ちて無くならないようにインターホンの受話器を札の上に乗せた仕草を、我ながら見苦しいと思ってしまった。
「さあ、M。これで身体は僕のものだ。早速、拘束具を身に着けてもらおう。手の届くところはすべて自分で装着するのだ。順序を間違って着けられない装具があれば、初めからやり直しをさせる。最初だけ指定するが、まず口枷にする。生意気なことを言えないように口を大きく開けているのだ。言葉が話せなくなる前に言いたいことを言ってから口枷を装着しなさい」
ベッドの正面に置いたスツールに座った先生が冷酷な口調で命じた。
「言いたいことなど何もないわ。どうせ一晩買われた身体よ。存分に辱めるがいい。私は心までは売らない」
「ハッハハハ、やはり生意気なことを言う。女郎に売られた娘がほざくのと同じ台詞だ。今も昔も女は変わりはしない。そんな娘もつらい折檻を味わった後は嘘のように転ぶ。ここは遊郭の跡だ。Mにも折檻に泣く女郎の気持ちを味あわせてやる。さあ、口枷をするんだ」

先生の言葉が待ち受けている現実をMに思い知らせた。屈辱と恐怖が身体の中で交錯する。固く唇を噛みしめてから膝の前の口枷を手に取った。大きく口を開けて金属の輪を口にはめ、両手を後頭部に回して黒革のベルトで止めた。もっと強く、もっときつくと先生の注文が飛ぶ。Mの顔は縦横に走る革ベルトで無惨に歪んでしまった。次から先生の指示はない。装着する拘束具を自分で選ばねばならなかった。いずれにせよ手枷が最後に残ることに間違いはない。できれば一番恥ずかしい肛門調教具は後回しにしたかった。しかし、身体と足を拘束した後で、器具をうまく肛門に挿入できなければ初めからやり直しだった。やはり肛門調教具を選ぶしかなかった。Mはヒョウタンのように二つの瘤がついたゴムの筒を手に取った。手に取った瞬間、尻の穴がキュッとすぼまる。婆さんたちに強引に挿入されたときの激痛が甦った。確か、婆さんたちはLサイズだと言っていた。それを今度は自分で挿入するのだ。大きく股を開いて片手を尻に回した。目をつむって指先で肛門をゆっくりもみ上げる。先生の目が股間に吸い寄せられているのが目をつむったままでも痛いほど分かる。恥辱を振り捨てて一心にピアニストのことを思った。小さな官能の炎が下腹部に灯る。肛門が快楽に咽び、陰門に愛液が溢れ始めた。愛液を指先ですくって肛門になすりつける。黒いゴムの筒先を肛門にあてがい、陶然とした気持ちでゆっくり挿入していった。ピアニストの逞しいペニスを初めて尻に迎えるのだと思い定めた。陰門が歓喜に震え、大きなゴムの瘤を肛門が一気に飲み込む。Mは大きく溜息を付いた。だが、休んではいられない。皮のT字帯でゴムの筒を厳重に股間で止めた。異物を体内に呑み込んだ尻が屈辱に震えた。次に乳房強調拘束具を取り上げ、複雑に交差する皮帯に苦労しながら全身を拘束した。惨めな自縛を続けるMを、尻に垂れ下がった二本のゴムパイプとゴム鞠が滑稽に揺れて嘲笑う。最後に膝枷と足枷を着けて立ち上がった。引き締まった肉体に柔らかな皮帯が食い込み、裸身を縦横に拘束している。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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