2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1.キリン(4)

三年前にチーフが再開したクラブ・ペインクリニックで、睦月はSM自縛ショーを自作自演している。スナックのホステスではプライドが許さなかったようだ。クリエイテブな仕事をしたいと言うのが睦月の口癖だった。しかし、舞台の上で裸になり、自らを鞭打ったり滑車を使って天井から吊り下がってみたりするショーがクリエイテブだとは到底思えない。Mは睦月のショーを見たことがない。人の目も気にせず励む、ショーの練習を見せられるだけで十分だった。睦月がなぜSMを選んだのかMは知らない。恐らくSMショーの女優をしていたチーフの影響だと思うが、チーフにも睦月にも問いただしたことはない。Mの嫌ったクラブ・ペインクリニックを再開するからには、チーフにも相当の覚悟があったはずだった。チーフも三十八歳になる。サロン・ペインの経営者としての自負もあったと思う。結局、睦月は舞台に熱中した。今では前衛舞台のアーティストと思い込んでいる雰囲気すらある。新しいアイデアが浮かべば自宅でも、すぐ裸になって縄を持ち出し、自縛の稽古に余念がない。子供の進太の目を怖れる睦月ではなかった。進太が言うように、いつも睦月が裸でいるわけはないが、子供心には強烈な印象を与えるに違いなかった。それでも、幼いころから裸の睦月を見慣れた進太は、Mの裸にも頓着しない。たまたまMが裸でいるときも、平気でズカズカと部屋に入ってくるだけの話だった。むしろ羞恥心の育たない進太の成長に問題があると思う。

Mの心の動きを察したように、テレビの画面に見入っているとばかり思っていた進太が急に振り返った。真剣な表情でじっとMの目を見つめる。
「M、お願い。今ここで、僕に裸を見せて」
ボーイ・ソプラノで訴えた声が、Mには妙に大人びて聞こえた。もちろん返事につまる。
「私はママではないわ。裸で仕事はしない」
答えてしまってからMの心を悔いが走り抜ける。まるで職業蔑視を絵に描いた答えのように感じた。全身がかっと熱くなり顔が真っ赤になった。すかさず進太がMの長い足に絡みつく。
「ねえM。お願いだよ。Mはママと違うのはよく知っている。Mは夜の仕事はしないものね」
無邪気なのか、ませているのか判じかねるソプラノで訴え、椅子に座ったMの膝にのし掛かってくる。Mの頬が益々赤く染まる。子供見くびりを指摘されたような気さえした。もうMに勝ち目はなかった。進太が両手を身体の下に差し込み、Mのジーンズのボタンを外す。

「裸になってくれないなら、僕が脱がしちゃうぞ」
甘える声が耳をくすぐり、叱りつけるタイミングを失ったMのジーンズのファスナーが下ろされてしまった。
「今度だけよ」
我ながら陳腐に聞こえる言葉を口にしてから、Mは黒いTシャツを脱いだ。高く上がった豊かな乳房が進太の目の前で揺れる。進太は息を呑んで後ずさる。Mは静かに立ち上がってブラックジーンズを脱いだ。恥ずかしいところなどない裸身だが、子供の進太に穴の空くほど見つめられると、さすがに全身が羞恥で赤く染まった。高く切れ上がった股間で黒々とした陰毛が天を突く。

「わあー、Mはきれいだね。大きくていいよ。大きなお人形さんみたいだ。ママとは段違いだね」
感嘆の叫びを口にして、進太が胸に飛び付いてきた。素っ裸のMが進太を抱き留め、背中を抱く。ちょうど臍の所にきた進太の顔から温かな滴が湧き出し、Mの素肌を濡らした。進太が泣いているのだ。抱き締める腕に力がこもった。

「サクタロウと違って、Mの裸は柔らかで気持ちがいい」
啜り上げる声で進太が訴える。不吉な兆候だった。Mは進太を抱いた腕を解き、静かな声で言う。
「進太、ママの方が私より二十歳も若いのよ。ママの肌の方がずっと張りがあって柔らかいと思うわ」
「僕はママに抱かれたことはない」
怒った声で進太が叫んだ。続けてまた啜り泣く。Mの部屋で始めて見せる態度だった。Mの裸身が全身で戸惑う。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

最新記事
カレンダー
10 | 2011/11 | 12
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
free area
人気ブログランキングへ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR