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4.憎悪(2)

「そんな、お上品な詫び方では済まないわ。もっと尻を上げて、ひたいを床に着けるのよ」
睦月の高ぶった声がMの頭上から落ちてきた。微かに語尾が震えている。言葉に従うMの耳には喜びに震えているように聞こえた。浮かせた尻がこそばゆくて仕方がない。
「よし、そのまま膝を大きく開き、股間に両手を通すんだ。そうそう、右手で右足首、左手で左足首を握るようにするの。もっと尻を突き出し、ほっぺたで床を支えるのよ」
睦月の口から次々に指示が飛んだ。Mは後方に裸の尻を突き出し、膝の間に両手を入れて身体を丸くした。ぴったり床に着けた頬が痛く、呼吸が苦しい。

「大きな尻が桃のように見えるよ。その格好で桃縛りにしてやる」
背後から睦月の声が響き、尻の後ろに屈み込む気配がした。羞恥心が全身を襲い、思わず尻の穴をすぼめる。睦月の目の前で、尻の割れ目の中心に開いた赤い肛門が可愛らしくすぼんだ。睦月はフンッと鼻で笑い、素早くMの右手をつかむ。二つ折りにした縄で右手首と右足首を素早く縛り合わせた。冷たい縄の感触にぎょっとして、Mは自由になる左手を引っ込めようとした。だが、見苦しい振る舞いは睦月を喜ばせるだけだと思い直し、息を潜めて目をつむった。じっと次の戒めを待つ。睦月は手慣れた縄さばきで、またたく間にMの両手首と両足首を縛り合わせた。素っ裸で尻を突き出したMは、もはや床に這いつくばったまま身動きもできない。さすがに恥ずかしさで全身が赤く染まる。

「ハハハハ、M、いい眺めだよ。大きな尻の真ん中で臭い肛門が丸見えだ。股間に顔を出した性器まで見える。まったく恥ずかしいことこの上ない」
睦月の笑い声が部屋中に響いた。剥き出しの尻が肌寒いが、全身の皮膚から汗が噴き出す。肺に吸い込む空気がやけに暑い。Mは横顔を床に着けたまま目だけ動かして睦月の姿を追った。だが、背後にいる睦月の姿は視界に入らず、見上げた位置に進太の顔が見えた。心配そうに震える進太の視線に苦労して微笑み掛けた。恐怖にひきつった口元で、無理に微笑み返す進太の顔が大きく揺れた。途端に尻に激痛が走る。ピシッーという鞭音が部屋に響いた。

「ヒッー」
不意をつかれたMの口から悲鳴が漏れた。いつの間にかMと進太の間に立った睦月が、乗馬鞭を握ってMを見下ろしている。
「どこまで私たち母子を馬鹿にしたら気が済むんだ。そんな恥ずかしい格好で進太に色目を使うなんて許せない。私を軽蔑している証拠だ。謝れ」
声を震わせて睦月が叫ぶと同時に、二発目の鞭が尻を襲った。

「睦月の誤解よ。私は誰も軽蔑はしないし、馬鹿にしてもいない。悲惨な目に遭っている進太を励ましただけよ」
「クソッ、悲惨な目に遭っているのはお前だろうが」
睦月の一喝と共に連続して三発、激しい鞭が剥き出しの尻を見舞った。真っ白な尻に五条の鞭痕が赤黒く残った。身体の芯まで届きそうな痛みが、ゆっくりと素肌から筋肉へと染み込んでくる。Mの目尻から涙がこぼれた。
「私はいい。我慢できる。でも、早く進太の縄を解いて、許してやって」
「また、おためごかしを言う。進太は私の子だ。Mにとやかく言われる筋合いはない。それを、ままごと気取りで母親めかし、甘えさせて喜んでいるのが許せないんだ。何が社会人だ、警備会社の主任様だ。独り者の泥棒猫が子供をくすね、仕事の気休めに遊んでるだけじゃないか。何が生活費だ。何が小遣いだ。ピアニストの遺産を独り占めにしたMが、私たち母子に金を出すのは当たり前の話だ。私だって、好きこのんで貧乏してるんじゃない。懸命に働いている。人前に裸だって晒す。今のお前より、よっぽど恥ずかしい格好だってするんだ。その私の舞台を、Mは一度でも見に来たことがあるか。Mが言うように職業に貴賤の差別がないのなら、ましてや、私たち母子の世話を焼きたいのなら、見に来るのがあたりまえ。私を軽蔑し、馬鹿にして、陰で進太に川原乞食だと吹聴しているのが関の山だろうが」
一気に言い終わった睦月が、ことさら激しく鞭を振るった。無惨に突き出た尻で鞭音が響き、陰惨な鞭痕から細く血が滲んだ。Mの目から堰を切ったように涙が流れ出した。堪らない悲しみが波のように襲ってくる。睦月の断定が悲しいのではなく、ねじ曲がってしまった心根が悲しかった。睦月の足の間に見え隠れする進太の顔も悲しい。

「睦月の言い分も少しは分かる。確かに私はペイン・クリニックの睦月のショーを見に行っていないわ。その点は反省する。SMショーについて、私とチーフの意見が合わないのよ。それが足を遠ざけていた理由。睦月には関係ないの。今週の土曜日には、きっと舞台を見に行く。約束するわ。でも進太のことは、すべて睦月の誤解よ。あなたが折檻をやめれば、私は進太に会う必要もない。進太はあなたの子よ。なぜ、自分の子を死ぬほど辛い目に遭わすの。今日からは、いつでも私が身代わりになる。進太を折檻することだけは許さない」
静かに訴えるMの声を睦月が再び鞭で遮った。Mの口から悲鳴が上がる。
「ショーを見に来るのはMの勝手だ。だが、進太は私の子だ。他人のMに家族への干渉はさせない。お高く止まった今までの言い振りを、たっぷり母子で矯正してやる。おまえの望みどおり進太は許す」
言い捨てた睦月が後ろを向いて屈み込み、進太を後ろ手に縛った縄目を解いた。進太は長時間縛られ続けて痺れてしまった両手を前に回す。たらいに溜まった尿で汚れた足をタオルで緩慢に拭いた。やにわに睦月が進太の頬を打つ。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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