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9.事情聴取(1)

夜明けと共に警察官が富士見荘に駆け付けてきた。カエル腹の責め苦が続くMの身体を案じたお菊さんが、匿名で交番に通報したらしい。やってきたのは自転車に乗った若い制服の巡査が一人きりだ。110番に通報しないところがお菊さんの老練なところだった。

巡査は出迎えた四人の婆さんに、先生の部屋に忍び込んだ者がいるという通報で出動したことを告げた。急いで全員で二階に上り、息を殺して部屋の様子をうかがう。お菊さんがドアを叩き、何回となく呼び掛けたが返事がない。緊張した顔になった巡査が婆さんたちを下がらせて、ノブに手を掛けた。ドアは簡単に開く。先生の無惨な死体が巡査の目を打った。一瞬身体が凍り付いたが、慌てて部屋に踏み込んでいく。先生の開ききった瞳孔を確認すると全身が震えた。任官したばかりの巡査が他殺死体を目にするのは初めてだった。たちまち気が動転してしまう。かろうじて無線で本署に殺人事件の一報を入れ終えてから、ほっと肩で息を付いた。閉められた寝室の戸が妙に気に掛かった。犯人が潜んでいるかも知れないと思った。全身で身構えて一気に戸を開いた。今度は拘束された裸身が目に飛び込んできた。妊婦に違いないと思った。縛られたまま死んでいるのかも知れなかった。恐る恐る裸身に近寄り、そっと肌に手を触れる。手に温もりが伝わると同時に裸身が身を震わせた。巡査の背筋を安堵と感動の混じり合った衝撃が走った。女が妊婦ではなく過酷な拷問に遭っていることも分かった。慌てて救出に取り組み始める。もはや現場の保存も念頭になかった。震える指先で手枷と乳房強調拘束具を解き、下腹の膨れ上がった裸身を立て膝にさせた。両足の間から黒革のT字帯で装着された肛門調教具を観察する。尻にぶら下がった異様な器具で体内に空気を注入したことは理解できたが、空気を抜こうとして重大なミスを犯した。巡査は浣腸のバルブでなく、肛門の内と外を挟んだ風船のバルブを開けてしまったのだ。

口枷を噛まされたMは巡査に注意する術がない。肛門の内と外から括約筋を強く圧迫していた二つの風船が急激に萎んだ。下腹に充填されていた空気が凄い圧力で栓の緩んだ肛門に向かった。

ブワッーン

尻の割れ目で凄まじい爆発音が響き、裸身が後ろにのけ反る。尻から肛門調教ポンプが吹き飛び、糞便の混じった空気が部屋中に吹き出す。慌てて巡査が身を避けたが、発射された空気鉄砲のスピードにはかなわない。全身を糞便に見舞われてしまった。Mの下腹が急速に萎む。体内に残った空気が腸の蠕動に応じて排出されていくのがよく分かる。括約筋が弛緩し、肛門が開ききってしまったため恥ずかしいガス音も出ない。なんとも言えない爽快な開放感が全身を満たした。やっと部屋に静寂が戻る。

「ハッッハハッハハハハ」

突然、けたたましい笑い声が響いた。廊下で待っていた四人の婆さんが、異様な音を聞きつけて部屋に踏み込んできたのだ。さすがに、お米さん、お梅さん、桜さんの三人は先生の死骸を見てぼう然としている。ただ一人、お菊さんだけが寝室の前に立って童女のように笑い続けている。ベッドの上に仰向けになったMの裸身がうっすらと赤く染まった。どんな状況にあっても、恥ずかしさは感じるらしい。なぜかほっとして、首をもたげてお菊さんを見上げた。数時間前の悪鬼の形相が嘘のように鼻を押さえて笑っている。いたずらっ子のように片目をつむって首を振った。昨夜の約束を守れという合図に違いなかった。仕方なくMも目で笑い掛けた。

サイレンの音が近付いてきて階下で止まった。本署から駆け付けてきた三人の私服刑事が部屋に踏み込んできた。中年の男が目を白黒させて大声を出す。
「だめじゃないか。これじゃ捜査にならない。みんな出てってくれ」
四畳半二間の先生の部屋は十人の人出で大混雑だ。捜査員が怒鳴りたくなるのももっともだった。
「これはすまんことで、わしらは部屋で待機しますよ。聞きたいことがあったらいつでも呼んでください。この娘も連れていきます」
腰を低くしたお菊さんが、一番年配の捜査員に媚びるように言って寝室に入ろうとする。廊下を挟んで向かい合わせの自室からバスタオルを取ってきた桜さんが後に続いた。
「だめだよ。この女性は目撃者なんだろう。事情聴取が済んでからだ」
一番若い捜査員が興奮した口調で二人を押しとどめた。
「刑事さん、それはあんまりじゃないか。この娘は誰が見ても被害者だよ。死にそうな目に遭っていたから交番のお巡りさんが助けたんだ。病院に入れるのが筋ってもんだ。素っ裸で糞まみれの娘から警察が強引に事情を聞いたと、わしらは誰にでも話して回るよ」
お菊さんが若い捜査員を睨み付けて鋭い声で言った。死体の横に屈み込んでいた中年の捜査員が立ち上がり、二人の背に声を掛ける。
「婆さんたちの言うとおりだ。下で待機していてもらえばいい。すぐ鑑識を入れよう。俺たちはまず、巡査から事情を聴くんだ」
うんざりした声で言って、三人の捜査員を見回す。全員が苦い顔でうなずいた。
「僕もこの有様ですよ。早く着替えさせてください」
交番の巡査が情けない声を出した。
「何言ってるんだ。殺人事件だぞ。じっくり話を聞く。早くこっちに来い」
若い捜査員が怖い顔で巡査を呼びつけた。お菊さんと桜さんが寝室に入り、口枷が残る無惨な裸身にバスタオルをかけた。Mは壁に向かってよろよろと立ち上がる。片手をさり気なくサイドテーブルに伸ばしてインターホンの下に置いた十万円を取って素早くタオルの下に隠した。見咎めたお菊さんの目が鋭く光ったが何も言わない。足元のおぼつかないMに四人の婆さんが付き添い、死人となった先生の部屋を後にした。

婆さんたちのたててくれた朝風呂にMはゆったりと浸かった。珍しく熱すぎない湯が痛む節々を優しく包み込む。だが、一晩膨れ上がっていた下腹の感触は消え去らない。今にも腹が膨れ出し、水面に浮き上がりそうで怖い。ぽっかりと開いてしまった肛門からは、しきりに湯が入り込む感じがする。手を尻に回し、丁寧に肛門をマッサージして括約筋の回復を図った。十万円が手に入ったが散々な有様になったと思う。もう五月五日だった。早くピアニストに会いに行きたいと心が急くが、そう簡単に警察が解放するとは思えなかった。二十分かけて湯に浸かり、洗い場の隅で肛門から逆流した湯を排泄した。括約筋も引き締まるようになっていたが、醜く膨れ上がっていた下腹の感覚はまだ消えそうにない。バスタオルを裸身に巻き付けて台所に行き、朝食を食べていた四人の婆さんたちの輪に入った。殺人事件のあった連休最終日に、富士見荘では日常の暮らしが戻っていた。生活者が対処できないほどの異常事態をかいくぐるには普段の暮らしを守り通すことが最善の道なのだ。朝食が終わろうとするころ、紺の出動服を着た鑑識課員を従えた二人の捜査員が台所に入ってきた。
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Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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