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5.遠すぎる少年時代(6)

三十分も経たないうちにピアニストが入って来た。促されるまま肩を並べ、待合室を出る。
「最初の見込み通り問題はない。しかし包丁の傷なので油断ができない。雑菌が多いからね。外科の当直医の手が空いたので、完璧な処置をしてもらったよ。もう帰っていいのだけれど、病院で一晩過ごさせようと思う。鉱山の町には、もう遅くて帰れないものね。本人も納得したよ」
「ありがとう。でも、修太は今、チーフのところに泊まっているの」
「それでも同じさ。チーフだと無理をしかねないからね。いろいろとね。ところで、Mはどこにいるの」
「私は理事長の家にホームステイ」
Mの答えに、ピアニストの反応はない。口をつぐんだまま廊下を進み、待機室と書かれたドアを開けた。当直医の部屋らしい狭い空間には、ぼんやりと常夜灯が点り、ベッドと机しかない。暖房だけはよく効いていた。

「M、迷惑をかけてごめん。でもありがとう。ピアニストとも知り合いなんだってね。俺も心強いよ」
厚手のシーツを掛けてベッドに横になった修太が、わりと元気な声を出した。
「でも、ここではピアニストが困るでしょう。やはり私と帰った方がいいわ」
「いや、僕は修太の隣でも寝られるよ。眠れる暇さえあればね。男同士もいいものさ」
明るい声で言ったピアニストが、無造作に修太のシーツを捲り上げた。
薄明かりの中で、修太の剥き出しの股間が露になる。白いガーゼを当ててテープを張った患部の横に、陰毛の中に埋もれそうなほど小さなペニスがあった。さっと修太の頬が赤くなるのが分かる。

「さあ行こう。Mは理事長の家に帰るんだろう」
修太のシーツを直しもせず、ピアニストはMを促して外に出た。プライドの強い修太を考え、Mもシーツをそのままにして外に出る。
「明日チーフに、修太のズボンを届けるように言ってよ。それからM、くれぐれも理事長の仕事の邪魔はしないで欲しい。僕たち全員の将来がかかっているんだからね。それじゃあお休み」
素っ気ない口調で言って、ピアニストは検査室と書かれたドアの中に消えた。廊下に取り残されたMは、渦を巻いて押し寄せてくるような、自分に関係した人たちの勝手な思惑に戸惑いを感じた。


ピアニストは時間が空く度に待機室の修太を見舞った。
決まって三十分程度、修太に話し掛ける。Mのことや、祐子のこと、そして修太の母であるナースのことなど、昔のエピソードを交えて面白そうに話していく。そして、救急センターに戻るときは、決まって修太の足元からシーツを捲り上げ、裸の下半身を剥き出しにしていった。
ピアニストの見舞いのため修太は眠れない夜を過ごした。しかし、局部麻酔が切れて鈍く痛む傷口がきっと、今夜は眠らさなかったろうとも思う。

しばらく時間が経ってから、またピアニストが現れた。白衣の前がぞっとするほど血で汚れている。
「何だ修太、まだ眠らないのかい。もう朝の四時半だよ。やっと僕も一時間半の仮眠が取れる。一緒に寝よう」
「ピアニストの白衣、凄い色だよ」
「交通事故の急患が来たのさ。でも、白衣を汚しただけで死んでしまった。脱いでしまおう」
修太の顔をのぞき込んでから、ピアニストは上下になった白衣を脱ぎ捨てた。白衣の下は素っ裸だった。均整のとれた痩身だが、修太にも医師に必要なだけの筋肉は備わっているように見える。美しい裸身だと思った。

「ピアニストの身長はどのくらい」
「百七十三センチメートル。のっぽじゃないよ」
すぐ答えが返ってきた。
「いいな、俺より十四センチ背が高い。Mよりも三センチ高いんだね」
ピアニストの裸身が、ベッドの横に屈み込んだ。慣れた手つきで修太の足元からシーツを捲り上げ、裸の下半身を露にさせる。修太の頬がまた赤く染まる。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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