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6.ドーム館の黄昏(7)

豊かな乳房を自ら縛った菱縄は今も、厳しく胸元を緊縛している。縄目から飛び出た乳房に、理事長が苦しさのあまり握り締め、爪を立てた手の痕が赤黒くなって残っていた。爪痕からは、うっすらと血が滲んでいる。しばらくの間、この手形は青々とした痣になって乳房に残るだろうとMは思った。

背中から延びた縄を引きずったまま、ガウンと毛布を取りに、Mは理事長の私室へ向かう。床を這う黒い二条の縄を、修太が靴で踏んだ。疲れ切ったMは、その場で背中から床に倒れる。頭を庇うために足を大きく開き、尻から床に落ちた。
大きく股間を開いた無様な姿勢で仰向けになった視界に、口を歪めて嘲笑う修太の顔が入った。

「修太の意地悪」
六年前の、小学校六年生の修太に言うような言葉が口を突いた。言ってしまってから甘えるような言葉を恥じたが、情け容赦なく修太の罵声が飛ぶ。
「Mは薄汚くなった。恥を知ったがいい」
素っ裸で自縛した縄目を晒し、股間を広げきったまま横たわるMの全身に衝撃が走る。
「何を言うの」
大きく叫んで立ち上がったMが、右手を一閃して修太の左頬を打った。真っ赤な手形を頬に付けた修太が、流れ出る涙を拭おうともせず胸を張って大声を出す。
「都合が悪くなると暴力なのか。Mはイジメッコと同じだ」
Mの下半身から頭まで、また衝撃が走った。ピアニストが冷たい声で追い打ちを掛ける。
「理事長が舌を噛む恐れがあると言った言葉に、Mは過剰に反応したんだ。しかし、Mがしたようなことをする者は、この世に一人も存在しない。Mは異常すぎるよ」

ついに異常者にされてしまったと、Mは思った。共にホームステイで過ごした家の子供が、揃ってMを拒絶する。もうMに、身の置き所はなかった。
「いいわ、私は理事長を連れて鋸屋根工場に行く。あなた達は帰ってちょうだい」
振り絞るようなMの声が、ドームの下に響き渡った。
「ダメだよ、M。パソコンに入力されている緊急時マニュアルを良く読んで欲しい。僕が呼ばれた以上、理事長の意志を遂行するのは僕の仕事だ。それが理事長の意志だ」
ピアニストの冷ややかな声が、円形の室内に流れた。
「分かったわ。あなた達は私を理事長から遠ざけたいのね。それなら、私が勝手にチハルの工場に行く。それでいいのね」
「別に止めはしない。後は意識を回復した理事長が決めることだ」
ピアニストの冷たい言葉に、Mが大きくうなずいた。

「M、見苦しいよ」
流れる涙を拭おうともせず、左頬に真っ赤な手形を付けた修太がなじるように言った。
「どうして」
尋ねる声に返ってくる答えはない。

素っ裸の股間から頭の天辺まで、冷たい風が一瞬のうちに吹き抜けていった。
Mの裸身が激しく震え続ける。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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