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6.ドーム館の黄昏(1)

冬の早い夕暮れが、山地をいち早く夜に誘う。蔵屋敷の高窓は既に、闇に染まっていた。

まだ日のあるうちに、街へ行くと言って出掛けたきりのピアニストは、まだ戻ってこない。ベッドと応接セットだけのがらんとした蔵屋敷の広間に、光男は一人で取り残されていた。暖房は十分すぎるほどだったが、外の冷気が檜張りの床を這って、足元から股間に上ってくるような気がする。

光男は素っ裸で、蔵屋敷に二本直立する巨大な柱の一本に、鎖で繋がれている。細い首筋に頑丈な犬の首輪が巻かれ、首輪から延びた太い鎖が、柱に埋め込まれた鉄の金輪に錠で止められている。

光男は所在なく、床にしゃがみ込んでいる。剥き出しの丸い尻が微かに震えた。二度目の尿意が襲ってきたのだ。肌に感じるヒーターの暖かさを拒絶するように、腹の底から全身へ寒さが襲う。そっと辺りを見回してから中腰になり、白いバケツに大きなペニスを向けた。弱々しく細い澪がペニスの先からバケツに落ち、底に溜まっていた尿に当たって情けない音を立てる。

恥ずかしさで全身が赤くなったが、二回目の今回は、屈辱より諦めが先に立った。
悄然とした視線の先に、小さなクリスマスツリーが見える。応接セットのテーブルの上で、ツリーを飾るイルミネーションがきらめいている。後一週間でクリスマスだった。情けなさが、ひとしお光男の胸に染みる。

残った尿の滴が力無く足元に落ち、光男の右足を濡らした。思わず足をずらすと、足首を厳しく噛んだ足枷の鎖が鳴り、屈辱感が全身を走り抜ける。

光男は素っ裸のまま後ろ手に手枷をはめられ、両足を足枷で拘束されていた。両足首を拘束した一メートルほどの鎖の中央から、やはり一メートルほどの細い鎖が股間に延び、ピンク色の肛門からのぞく銀色の金属棒に繋いである。この残酷な拘束具のため、光男は床に座ることも、立ち上がることもできないでいた。肛門の中では、金属棒の先が傘のように開き、抜き取ることを許さない。

拘束具を尻に挿入していったのはピアニストだった。
信じられないほど理不尽な仕打ちが、光男に襲い掛かったのは三時間前のことだ。
朝から続くたまらない不安と焦燥感に耐えかね、光男は正午に市民病院を訪ねた。看護婦からピアニストの休暇を知らされ、薬をねだりに蔵屋敷を訪れたときは、優しく迎えられたと思っていた。鎮静剤を静脈に注射してもらい、見る間に晴れていく憂鬱に久しぶりのすがしさを感じた。開放感で心が弾み、ピアニストを誘うように裸になった。喜んでもらいたい一心で光男は床に這い、肛門を襲う痛みを覚悟して尻を高く掲げた。しかし、肛門に挿入されたものは、猛り立った熱いペニスではなく、凍り付くように冷たい金属棒だった。冷たい感触に鳥肌立った尻の割れ目で、小さな金属音が響いた。音と同時に、肛門深く挿入された金属棒が体内で膨れ上がるおぞましさが、背筋を貫いていった。
驚いて振り返った光男の目に、冷たく笑うピアニストの顔が映った。
「訳を知ったら、きっと光男も喜んでくれるよ」
平然と言ったピアニストは、光男の両手を後ろ手にして手枷で縛り、両足を足枷で拘束した。挙げ句の果てに、尻に挿入した金属棒から延びた鎖を足枷の鎖の中央で連結してしまったのだ。

拘束具で戒められた光男に、街に出掛けてくると言い残してピアニストが与えたものは、利尿作用のある薬に対処するための白いバケツだけだった。
悲惨すぎると光男は嘆く。薬剤で追い払った憂鬱が、また全身に襲い掛かってくる気がした。


静まり返った蔵屋敷に、遠くから低いエンジン音が聞こえてくる。
やっとピアニストが帰ってきたのだと、光男は思った。
車のドアが閉まる金属音が、二度響き渡った。訝しく思った光男が首を捻ったとき、自動ドアの開く音が聞こえた。ほのかなスタンドライトの照明だけだった蔵屋敷に、まぶしく明かりが点った。光男の白い裸身がピクッと震え、思わず柱の影に身を隠す。
引き戸を開けてピアニストが颯爽と入ってくる。厚手のツイードのパンツの上に、やはり分厚い黒のウールニットのジャケットを着ている。白いシルクシャツの襟元を、光沢のあるパールのスカーフが飾っていた。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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