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6.ドーム館の黄昏(6)

「理事長。こんな露骨な肉体をお見せしたことを、お怒りにならないでください。私はこれだけの人間なのです。そして、そのことを恥じてもいない。性的な関係の中でなら、私は何でもできます。それが私の喜びだし、あなたにも喜んでもらいたい。もし理事長が望むなら、この姿のままウンチをすることも厭いはしない」
「してくれるだろうか」
即座に理事長が答えた。股間で逆立ちになったMの両目を、炯々と光る視線が捕らえた。
「お望みとあれば」
理事長の突き刺さる視線を全身で受け止めたMが、下半身に力を込めた。理事長の目の前で、小さくすぼまっていた肛門がゆっくり盛り上がってくる。

「ハハハハ、ありがとうM。私も人々の日常の苦悩を癒すために、いかほどのことでも良いからしてみたいと思っている。しかし、私が排便する姿など、見たい者がいるはずもない」
Mの口元が笑った。盛り上がった肛門がまた、可愛らしくすぼまる。
「いいえ理事長。私は見たい」
Mの叫び声を聞いて、また理事長が笑い出した。痩せた裸身をのけ反らせ、子供のように笑う。股間越しに、逆立ちになって笑う理事長の顔が、Mに見える。少年のように邪気のない、明るい笑いだった。

しかし、その笑いがたちどころに消え、理事長の顔が苦痛で歪んだ。痩せた裸身が椅子から滑り落ち、Mの視界から消えた。代わって、耳に響く苦痛を耐える呻き声が、部屋中に満ちた。
Mは急いで起き上がり、身体を回して理事長を見た。毛足の長いアイボリーの絨毯の上で、裸身を海老のように曲げて呻く理事長の姿が目に飛び込む。Mはテーブルから飛び降り、理事長の顔の横に屈み込む。

「理事長、しっかりして」
大きな声で呼び掛けると、歯を食いしばった口元から一筋、血を流した理事長が上半身を起こした。両手を伸ばし、邪険にMを後ろ向きにする。震える両手でMの縄目を解き始める。
ようやく自由になった痺れきった両手で、再び床に倒れ伏して呻く理事長の裸身を抱き、耳元に口を寄せた。
「すぐ、救急車を呼びます」

Mの声に理事長が激しく首を横に振った。苦痛に歪む口から、やっとの事で言葉を紡ぎだす。
「救急車は駄目だ。私の書斎に行って、パソコンのキーを叩け。まずピアニストを電話で呼びつけろ。後はパソコンの指示通りにしてくれ。M、びっくりしなくていい。予定より早く麻薬が切れ、癌の痛みが襲ってきただけのことだ。うろたえずに、今言った通りにしてくれ。私は一人で我慢できる。急いでくれ」

理事長の裸身をゆっくりと床に横たえてから、Mは指示通り書斎に行った。後ろから、苦痛を耐える呻き声が絶えることなく続き、Mの後ろ髪を引く。
十畳の書斎の真ん中に、どっしりとした樫材のデスクが置いてあった。広い机上の中央に、一体型のパソコンが載せてある。Mはキーボードの前に座ってエンターキーを押した。真っ暗だったディスプレーが急に明るくなり、黒い文字に赤い縁取りをした「緊急」の画面が現れた。もう一度キーを押すと、ピアニストの名と携帯電話の番号が大きな緑色の文字で現れた。デスクの隅の電話を取って、間違えないように慎重に、長い番号をプッシュする。しばらく呼び出し音が続いてから、ピアニストの無機的な返事が聞こえた。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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