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9.祖父(4)

「俺にも希望はある。リハビリで努力をすれば、Mのように元気で美しくなれるだろうか」
独り言のように陶芸屋がつぶやいた。
「無理ね。それはただの夢よ。希望と夢は違うわ。現在の自分を受容するところから希望は広がるのよ。地に足が着かない夢とは違う。さあ私を見なさい。陶芸屋が五十二歳なら、私も、もう四十五歳よ。陶芸屋が美しいと言ってくれた身体も変わった。私の裸をしっかり見なさい」
陶芸屋の目を見つめて言ったMが、汗と涙で濡れた祭り半纏を脱ぎ白いTシャツとショートパンツを脱いだ。

陶芸屋の目の前に素っ裸のMが、無防備に両手を下げて立っている。確かに記憶の中の裸身とは違っていた。豊かに盛り上がっていた乳房は、いささか張りを無くし、弾力感がない。生意気そうに上を向いていた両乳首も、申し訳なさそうにうなだれている。脇の下から二の腕に着いた肉も重そうに見える。細く引き締まっていたウエストのラインも丸みを帯び、腰から腿にかけても余分な肉が目立った。以前と変わらぬ白い肌のそこかしこに、焦げ茶色の色素が染みのように沈着している。だが、見苦しいところなど一切ない。完璧な裸身に思える。何も構わなくなった陽子の裸身とは雲泥の差だった。目前にした生身の肉が陶芸屋の無くした性を責めつける。

二人の横に立ちつくす祐子は、繰り広げられる異様な光景に声も出ない。陶芸屋の熱い視線に、堂々と四十五歳の裸身を晒すMの真意を計りかねた。Mに命じられれば、いつでも惜しみなく裸身を晒す覚悟が祐子にはある。何よりも祐子の裸身は非の打ち所がないほど美しいはずだった。だが、陶芸屋の目に灯った怪しい揺らめきを見ると、見る者を性の高まりへと誘う裸身は美しさだけがすべてではないような気がする。妙に頭の中が混乱し目がくらみそうになった。突然、露骨な言葉が祐子の耳に飛び込んできた。

「後ろを向いて、尻を見せてくれ」
高ぶった震える声で、陶芸屋がMに頼んだ。
「いいわよ。陶芸屋はお尻が好きだったわね」
無造作に答えたMが後ろを向いた。豊かな丸い尻がゆったりと息づいているが、やはり陶芸屋の記憶より位置が低い。決して垂れ下がっているわけではないが、尻の割れ目の切れ込みも浅くなったように感じられた。
「中も見て」
背を見せたまま言ったMが両足を開き、腰を曲げて尻を突き出す。黒い色素の浮いた肛門が笑い、陰唇の間に赤黒い肉襞がのぞいた。黒々とした陰毛の根元に、小さく尖った性器が見える。全体に乾いた感じのする陰部だった。

「かわいそうに」
小さくつぶやいた陶芸屋が右足を引きずって進み出る。Mの股間に苦労して屈み込み、尻の割れ目に顔を埋めた。不器用な舌が止めどなく股間を這う。切羽詰まった陶芸屋の喘ぎがMの耳に聞こえてくる。いつしかMの股間は陶芸屋の唾液でしとどに濡れた。だが、官能の高まりはやってこない。熱い悲しみが胸の底から股間に下りてきただけだった。Mは背筋を正して振り返り、陶芸屋を見下ろした。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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