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8.海辺の情景(3)

「さあ、どうだ。これで満足だろう。もう、逃げられないぜ。確実に死ねる」
陽気な声で、晋介が捨てぜりふを投げ掛けました。
「満足よ。私の死をよく見ているがいいわ」
大きな声で答えた祐子の語尾が、寄せる波に打ち消されました。恐ろしい光景を前にして、僕の足は小刻みに震え続けています。ボタンを掛け違えてしまったような、ちぐはぐな思いが頭の中を交錯していきます。美しい夕日の中で始まった残虐な事態が、まるで幻のように思えてしまいます。けれど、わずか五メートル前方に、縛られた裸身がうつ伏せになっているのです。祐子の両手を縛った杭の高さは一メートル以上あります。その半分の高さまで無数の貝がへばりついているのです。満ち潮の位置です。祐子の全身はいずれ、確実に海中に没してしまいます。逃れようもない死が襲い掛かってくるのです。これは殺人でしょうか、それとも自殺幇助なのでしょうか。僕にはよく分かりません。残虐な死を受容しようとする、祐子の確固とした意志だけが波の中に屹立しています。

「息が止まるまでの時間は、思いの外早いよ。頭まで潮が満ちればいいんだ」
砂浜に戻ってきた晋介がつぶやきました。さすがに緊張した声です。僕は答えることができません。預かっていたライカを黙ったまま手渡しました。
「死にたいくらいだから、恐怖もない。意外に楽な死に方かも知れないね」
また晋介が声を掛けてきました。僕の答えを待っているのが痛い程よく分かります。暴力的な行為への評価を求めているのです。

「進太さんは、縄を解くこともできる」
沈黙している僕に、言葉の矢が打ち込まれました。晋介の言うとおりです。祐子を縛り付けたのは晋介ですが、僕には縄を解くことができます。瞬時に様々な感情が脳裏に渦巻きます。最後に祐子のことを考えました。一瞬の苦痛の先に平安が待つなら、死も希望の一つに違いないと信じたくなります。
目を大きく見開き、うつ伏せに横たわる祐子を見つめました。波が引くと両手を広げた裸身があらわになります。続けて、次の波が打ち寄せます。白い裸身を波飛沫が覆いつくします。僕は立ち尽くしたまま、祈祷のように晋介の言葉を繰り返しました。
「楽な死を、楽な死を、楽な死を」


海面も空も真っ赤に染まっていきます。
晋介が軽蔑したように、赤一色に染め上げられた血のような夕焼けです。打ち寄せる潮の響きが高まります。身動き一つしなかった祐子の裸身が苦しそうに動きました。だいぶ潮が満ちたのでしょう。波が退いた後でも、呼吸がしにくくなったようです。また波が打ち寄せました。波間から突き出た尻が苦悶に打ち振られます。生への本能は、やはり残酷でした。呼吸の苦しさに耐えかねた祐子が、自由になる下半身で悶えたあげく、立て膝になって腰を持ち上げました。僕たちの目に、大きく開いた尻の割れ目を晒したのです。

海中から突き出た豊かな尻は、残酷なほど滑稽に見えます。寄せる波が尻を越えて浜辺に打ち寄せてきます。呼吸ができない苦悶の時間を、祐子は尻を打ち振って耐え続けます。引いていく波が股間を流れ去る瞬間、縛られた両手を振り絞って鋭く息を吸い込みます。まるで波の動きが肉体を弄んでいるような、卑猥な眺めです。海が祐子を犯し、死へ誘っているのです。しかも、苦悶の時間は着実に長く、呼吸できる瞬間は確実に短くなっていきます。
再び大波が襲い掛かりました。一瞬こわばった尻が苦悶にうごめきます。大きく開いた股間で収縮する陰部が、快楽を追っているようにさえ見えます。波が引き始めると陰部が弛緩して、次の緊張に備えます。じっと見つめている僕の股間が熱くなってきました。波のリズムは祐子の官能のリズムです。他愛なく勃起してしまいました。

「進太さん、今生の名残だ。波だけに犯させているいわれはない。やってやりなよ」
晋介が声を掛けてきました。慌てて横を見るとライカを構えたままです。膨らんだ股間を見られたわけではありませんでした。でも、図星を突かれた僕は全身が真っ赤になってしまいました。黙ってジーンズを脱ぎ捨てます。この海岸には男は二人しかいないのです。そのうちの一人がセックスを勧めたのです。断るには理由が要りますが、僕に理由はありません。何よりも、ぼう然と祐子の死を観察するより、僕のペニスで、はなむけを捧げる方が、よっぽど情にかなっています。黒いビキニパンツを脱ぎ捨てると、上を向いたペニスが夕日を浴びて真っ赤に染まりました。
僕は、悶える尻に向かって一散に駆け出しました。

「進太さん、見直したよ」
朗らかな声が背に響きました。不覚の涙が目からこぼれ落ちます。祐子の肉体だけを求め、波を蹴立てて走りました。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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