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4 渓谷(1)

Mが陶芸屋のアトリエに住み着いてから一か月が経った。
会社には休職の届けをファックスで送ってあった。担当した観光パンフレットのことも気に掛けずに、陶芸屋と修太との楽しい官能の世界に浸り続けていた。この、日溜まりにいるような心地よさは、まるで家族との団らんのようだった。

陶芸屋に感じた熱い予感も、ただの揺らめきだったかも知れないと思えてしまう。刺激が足りないのだ。
アトリエの隅にビニールシートを敷き、思いを巡らせながら粘土をこねる作業を繰り返していたMに、ろくろを回す手を休めた陶芸屋が声をかける。

「随分暖かだし、風もないようだから散歩にでも行くか」
部屋の隅でゲームをしていた修太がすぐ立って来る。
「行こう、行こうよM。俺、飽きちゃっていたんだ」
「それじゃあ、連れていってもらうかな」
手を休めてMが答えると、陶芸屋が「修太、縄を持って来てくれ」と嬉しそうに言う。
「はい」と答えて壁に吊った棚に走り寄る修太を横目に「縛るの」とMが尋ねると「暖かいから当たり前だ」と陶芸屋が笑う。

確かに暖かいと思い、壁際の洗面所で粘土にまみれた手を洗った後、Mはアトリエの中央に立った。一週間前まで、大きな石油ストーブが置かれてあった場所だった。
黒いトレーナーを脱ぎ、ジーンズを脱ぐと、Mはもう素っ裸だった。このアトリエに住み着いてからずっと、下着を着けたことはない。

「裸になるのか」
びっくりした顔で陶芸屋が言った。
「暖かいから当たり前よ」
涼しい顔でMが答える。
「でも、昼日中にいいのかなあ」
「何言ってるのよ。裸になるのは私なのよ。それとも、あなたも裸になる。さあ、きつく縛って」
壁にもたれたまま修太が、二人のやり取りをニヤニヤしながら見ている。どうひいき目に見ても、父の分がいいときは一度もなかったと修太は思った。とにかく、Mは子供心にも凄く格好良かったのだ。

形良く盛り上がった尻の上で、後ろ手に高く交差した両手が縄を催促する。
思い切って立ち上がった陶芸屋が修太から黒い麻縄を受け取り、背中で交差させた両手首を厳しく緊縛した。手首を縛った縄を首筋近くまで引き上げ、左右に分けた縄尻を豊かな胸に回す。乳房の上下を二巻きした縄を二の腕に回し、背中で縄止めした。

「随分シンプルな縄目ね。腰縄も打ってちょうだい」
不満そうに言うMに「散歩に行くんだから。活動的な縄目の方がいいよ」と、陳腐なことを言う陶芸屋。Mに言われるままに、もう一本の黒縄でウエストを二巻きして、腰縄の端を持ち「さあ、行こう」と声をかけた。
小さくうなずいたMは、幾分うつむいて歩を進める。

先に立って引き戸を開けた修太に続いて戸外に出る。穏やかな春の日差しがまんべんなく裸身を包み込む。白い肌が光に包まれ、透き通ってしまいそうだ。陶芸屋も修太もまぶしそうに、後ろ手に緊縛された裸身に見入った。

「誉川の上流へ行ってみよう。上流なら人の来る心配がない」
陶芸屋の言葉に、またMが噛みつく。
「私は、いくら見られても構わないのだから。下流がいいな。修太の分校も見ておきたいし」
「そんな、恥ずかしいよ。分校はいつでも見られる」
「私の身体のどこが恥ずかしいの。別に自慢する気はないけれど、恥ずかしい所などありはしないわ」
Mの剣幕に身体を縮めた陶芸屋が即座に話題を変える。
「ごめん。悪かった。上流で通洞坑の入り口を見せたかったんだ。通洞坑というのは、鉱山の一番下に水平に掘られた坑道なんだ。この通洞坑を中心に、鉱脈に沿って縦横に坑道が走ることになる。いわば基本となる坑道だね。これから散歩に行く先に元山鉱の通洞坑があるんだ」

「そう、勉強になるわね。それから修太、小さな方のウインチを持っていってね。高い木から吊り下がってみたいの」
陶芸屋の解説を上の空で聞き流したMが、修太に何気なく命じる。
聞いていた陶芸屋の顔に、また驚きが走る。
驚きの表情を横目で見たMが、にっこり笑って機嫌を直す。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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