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5 演奏会(3)

「S・Mショーの次は、お笑いが始まるのかい」
落ち着いた低い声が響き渡り、片手にストロボを着けたニコンを持った産廃屋が、照明の光の輪の中に大きな体を現した。

「俺の仕事を邪魔するやつが、二人揃ってお楽しみってわけかい。たっぷり目の保養をさせてもらったぜ。それに、傑作写真も撮れたようだ。できあがったら一枚と言わず、何枚でも町中に配ってやるから楽しみにしていろ。嫌だったら、つまらない反対運動はやめることだな」
楽しそうに大声を上げる産廃屋に、チェロが静かな口調で話しかけた。

「産廃屋さん。今夜は個人的な演奏会なんだ。騒いでもらっては困るね。最低のマナーは心得てもらわないとね」
「こんなすけべショーには、ちょうどいいマナーと思うがね」
澄ました顔で産廃屋が応じる。

「やくざにお似合いのマナーってことね。品性の卑しさが滲み出ているわ。花見コンサートの意味も知らないで、すけべショーとはよく言ってくれたものよ。開いた口が塞がらないわ」
宙に吊されたMが、怒りに満ちた声を頭上から落とした。
産廃屋が初めて気が付いたかのように、とぼけた顔でMを見上げる。
「いや参ったねえ。素っ裸で吊り下げられた姐さんが一番威勢がいいね。せっかくのお言葉だが、大股を開ききってご開帳をしているんでは、口が塞がらないのは仕方がないってもんよ。上の口は知らないが、下の口はぱっくりと開きっぱなしだからな。すけべが過ぎるというもんだぜ」
吊り下げられたMの裸身が怒りで真っ赤に染まる。

「性を笑う者はきっと性に泣くわ。覚えておくがいい。今夜のコンサートはあなたのような恥知らずと、元山沢が一切縁を切るという画期的な儀式よ。元山沢を楽しむ人たちが集い合って、この精錬所の過去の罪業を、桜とモーツァルト、そして性の営みで、今宵限りきれいさっぱり洗い流したわ。明日からは二度と過ちは繰り返さないという決意の儀式よ。あなたなどの出る幕はないわ」
「ハハハハハ、盗人にも三分の理とは、よく言ったもんだ。素っ裸で股を広げきって、お楽しみの姐さんにお似合いの言葉だ。こう大っぴらにすけべショーをやられたんじゃストリッパーだって恥ずかしくなる。聞いた風な口を叩く前に、相方の行方でも捜したがいい」

憎々しく笑う産廃屋を睨み付けていたMの視線が、緑化屋と陶芸屋を捜した。二度周囲を見回した目がやっと、桜の陰に立ちすくんでいる陶芸屋の姿を捕らえた。陶芸屋の背後に、素っ裸で後ろ手に緊縛された緑化屋が小さくなって隠れている。Mは唇をきつく噛みしめた。情けなさで涙が出てくる。緊縛された両手を思わず握り締めた。

「ヤイッ緑化屋に陶芸屋、こそこそと隠れやがって。色キチガイの姐さんが一人で恥ずかしがっているぞ。何が反対運動だ、笑わすんじゃない。縮み上がったペニスをちょんぎられないように、せいぜい大事にすることだな」
凄みのきいた声で言って全員を睨み付けてから、産廃屋はゆっくりと背を向けて門の方へ立ち去っていく。
勝ち誇った様子が後ろ姿に溢れ、怒らせた大きな肩先で花が舞った。


二本の桜の間に吊り下げられたMの裸身が、産廃屋を見送って激しく揺れる。
揺れることのない決心が腹の底から改めて沸き上がってくる。
「産廃処分場の建設など、決して私が許さない」
血が出るほどきつく唇を噛みしめ、去っていく産廃屋の背に無言の怒りを浴びせかける。
股間に燃え上がる黒々とした陰毛の上に、白い花びらが積もっていた。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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