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6.山岳アジト(1)

すでに日は背後の山陰に隠れた。日陰になった水道記念館の一帯はことのほか寒々としている。まだ指名手配されていない霜月と如月が外の様子を探りに出た。二人ともポケットに入れた拳銃を握り締め、緊張した顔で周囲を警戒している。

八人の男女は全員が一階に下りて玄関ドアの前に待機していた。拳銃を握った手を顔の横に上げた姿勢で、修太がブラインドの隙間から外をうかがっている。

「もうじき時間だ。迎えの車が来る。卯月、乗り込み前のチェックをしろ。最初の車に五人、次も五人だ。二台目との間隔は五分間」
修太の低く緊張した声が響いた。黙ってうなずいた卯月が後ろに並ぶMの身体を点検する。Mは頭から毛布をかぶせられていた。毛布の下は全裸だ。Mと弥生に服を着せるかどうかで異論も出たが、遠目にはフード付きコートにも見えなくはない灰色の毛布をかぶせることで決着した。後ろ手に手錠をかけられ、口には祐子の織ったスカーフで猿轡を噛まされている。肛門栓も股間のリングもはめられたままだ。毛布の上からウエストを麻縄で二重に縛られていた。弥生と離されたことで、かえって厳しく拘束されることになってしまった。後ろの列に並んでいる弥生は、Mと同様素っ裸で毛布をかぶっていたが、手錠を外され猿轡も噛まされていない。懲罰を受けている弥生と虜囚のMとの差は明快だった。だが、弥生とお揃いのスニーカーを与えられたため、Mも素足は免れていた。

「車が来たぞ。出発用意。できるだけ急いで乗車」
外の広場にいる霜月の合図を受け取った修太が、押し殺した声で全員に告げた。ドア越しに重々しいエンジン音が聞こえてくる。大きく玄関ドアが開けられ、修太に脇を抱えられたMが屋外に出る。ピアニストと極月、卯月が後に続いた。玄関ドアから三メートル前の道路にパジェロが止まっている。後部ドアと助手席のドアが大きく開け放されていた。Mは修太に腰縄を曳かれ、ピアニストに押されるようにして後部ドアへ向かった。

「床に腹這いになるんだ」
背後からピアニストが厳しい声で命じた。Mは高いステップに立って後ろ手に縛られた身体を不安定に屈めた。途端に先に乗車していた修太が頭を押さえて床に押し倒す。自由にならない右肘をしたたかに床が打った。痛みに悲鳴を上げるが、厳しく噛まされた猿轡からは息も漏れない。情けなく鼻水が流れ、涙がこぼれ落ちただけだ。屈辱を感じさせる余裕も与えず、ピアニストと極月が毛布に覆われた身体を踏みつけて座席に着いた。ドアを閉める前にパジェロが発進する。道路の端に立った霜月と如月が緊張した顔で見送っていた。
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Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
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