2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

6.山岳アジト(4)

「裏に回ってくれ。玄関がある。車も隠した方がいい」
現実に戻った用心深い声でピアニストが文月に命じた。松林に背を向けた北側の壁は黒く塗られていた。ちょうど車三台分の駐車スペースも設けられている。黒い屋根が張り出した大きな玄関ドアの前にパジェロが停車した。
「さあ、やっと着いた。ドアは理事長の暗証番号で開く」
パジェロのドアを大きく開けて、一人で車外に出た修太の背にピアニストが呼び掛けた。寒風が車内に吹き込みMは身体をすくめた。極月の目の前で裸の尻が震え、括約筋が窄まる。赤黒い粘膜を割って突き出た肛門栓の先も震えていた。顔をしかめた極月がポケットから銀色の鎖を取り出す。肛門栓の先端に鎖を繋ぎ乱暴に手元に引いた。ヒッと短い悲鳴がMの口を突く。盛り上がった肛門から金属棒の先端が三センチメートルも抜け出た。体内に残ったロート状に開いた部分が括約筋に激痛を与える。極月の鼻孔をまた異臭が襲った。

「まったく臭い尻だわ」
極月の罵る声が痛みに震える裸身を打った。たまらない屈辱が込み上げ、突き出た尻が蒼白になる。
「顔の前に尻を広げるMが悪い。謝れるように猿轡を外してやるよ。極月が腹を立てるなんて珍しいことなんだ」
ピアニストが楽しそうに言って、狭い車内で中腰になった。勝手な言葉が怒りに火を点ける。好きで裸でいるわけではないと叫んでみたが、猿轡で声も出ない。屈辱感だけが情けないほど募る。早く弥生に会いたいと思った。

「へー、猿轡にするにはもったいない生地だね」
祐子の織ったスカーフを解いたピアニストが感じ入った声で言った。
「汚い手で触らないでよ。祐子が苦心して織った作品よ。人の痛みも分からない者に触って欲しくない」
唾液を吸い取られ、渇ききった口に怒りの声が満ちた。
「ふん、愛しい祐子の織った生地か。そんなに興奮するようでは会って早々淫らな関係が戻ったのかも知れないね」
あざける声で言ったピアニストがスカーフを床に投げた。うんざりした顔で極月に声を掛ける。

「さあ、早くMを降ろしてくれ」
大きくうなずいた極月が鎖を曳いて車外に出た。Mは尻を突き出した格好で、後ろ向きに引き出される。尻の痛みでステップを踏み外し、再び車の床に倒れ伏した。目の前にスカーフが落ちている。思い切り首を伸ばしてスカーフを口にくわえた。唾液で濡れた布地から祐子の香りが立ち上ってくるような気がする。Mの目から止めどなく涙が溢れた。

「情けない姿だ」
車外に両足を投げ出して横たわるMをあざけりながら、ピアニストが車を降りようとする。尻を踏まれた裸身が弓なりになり、スカーフをくわえた口から声にならない呻きが洩れた。
「さあ、いつまで寝ているのよ」
極月が冷たく言って鎖を引いた。肛門の痛みで反射的に尻を浮かす。ぼろぼろになった裸身を震わせ、やっとの思いで後ろ手に縛られた身体を起こし、大地を踏み締めた。汗まみれの肌に冷気が襲い掛かる。極月がまた軽く鎖を引いた。尻に伝わる鈍い痛みが、早く歩けとMに命じる。スカーフを噛みしめた歯に力を込めて、Mはゆっくり歩き始めた。止めどなく涙がこぼれ、冷たい風に吹き流されていった。

ログハウスの玄関からまっすぐ、幅一メートルの廊下が奥に続いている。山に面した北向きの天窓から入る光で屋内は明るい。鋸屋根工場を模した明かり取りが上手に配置してあった。廊下の左側に三つ、右側に四つのドアがある。効率的に設計された建築だったが、南に開けた部分が極端に狭い。山間に立てられる建築としては異様な配置だった。人目を忍ぶ意図が随所に見て取れるようだ。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

最新記事
カレンダー
07 | 2011/08 | 09
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
free area
人気ブログランキングへ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR