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6.山岳アジト(8)

「許しなど要らない。私の試練は私が乗り切る」
唇の端から血を滴らせた弥生が、凛とした声で叫んだ。
「勝手にすればいい。その様子では十秒も持たない」
極月が冷たく言い捨てて出ていこうとする。

「待ちなさい。あなたが命じた陳腐な刑の執行を良く見るがいい。弥生以外で耐えられる者など、この世にいない」
Mの怒声が広間に響いた。振り返った極月の目に憎しみが浮かぶ。
「お前の汚い裸も吊してやろうか」
極月の残忍な声を、突然弥生の悲鳴が覆い隠す。
「ヒッ、ヒヒッー、ヒー」
途切れなく続く絶叫がログハウス全体に轟いた。驚いて広間に集まってきた全員が、素っ裸で後ろ手に縛られ、両膝を直角に曲げたまま拘束された凄惨な弥生の姿を見た。

「何をやってるんだ。小娘をいたぶっている暇などない。早く解放しろ」
蒼白な顔でピアニストが命じた。
「ダメヨッ。これが現実よ。ピアニストの夢とは違う。極月、時間を教えて」
Mの大声が弥生の悲鳴に重なる。
「残り、二十秒」
左の頬をピクピクと痙攣させた極月がぼそっとつぶやく。
「弥生、後二十秒よ。勝てるわ。十五、十四、十三、十二、」
Mのカウントダウンする声が全員の興奮を誘う。十秒前からは数人が弥生を囲み、大声でMに和した。ひときわ高く弥生の悲痛な悲鳴が響き渡り、懲罰の時間が切れた。間髪を入れず、霜月が大きな手を鉄棒に伸ばしてリングに延びた鎖を断ち切る。弥生の裸身が糸の切れた操り人形のように床に倒れた。青白くなった裸身が痙攣を続けている。股間から流れ出た尿が瞬く間に床に広がっていった。だが失禁を笑う者は誰もいない。感嘆した声と拍手がぼろ切れのように横たわる弥生の裸身を包んだ。

「極月、後始末を命じる。規則どおり手錠ははずせ。私刑の処分は後で決める。他の者は食堂でミーティングだ」
ピアニストが吐き捨てるように言って背を向けた。修太が後に続き全員がそれに倣った。二つの裸身と極月、そしてオシショウが広間に残った。
「弥生こそ、神ながらの道を行く者だ。極月、驕り高ぶりは身を惜しむ者の振る舞いではない。修業が足りなかったな。二人をいたわって裸になれ。反省は免れまいが、みんなの心証が違うだろう」
言い残して去っていくオシショウの後ろ姿を極月が見つめ続ける。やがて肩をすくめ、小さく首を振ってから服を脱ぎ始めた。窓の外に広がる暗闇が三つの裸身を包み始めていた。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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