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3.内職(6)

拘束具から取り外した手枷を持って、お菊さんがMの背後に回った。驚くほどの力で両手を背中にねじ上げ、黒革の手枷で厳重に拘束した。厚手の羊皮で作った手枷はしなやかだった。両手首が無理なく一つに繋がれてしまった。続いて桜さんが首に黒い皮帯を巻く。柔らかな羊皮の帯が身体の前後に何本も垂れた。裸身の様々な方向に革帯が伸びて要所要所が尾錠で固定される。最後に背中の皮帯が手枷のチェーンに通され、首筋に向かって後ろ手が厳しく引き上げられた。調節のきく尾錠が固定されると拘束が完成した。豊かな乳房は菱形の皮帯で持ち上げられて、高々と突き出されてしまった。つんと立った乳首が目の下で仲良く並んでいる。両方の二の腕も左右均等に皮帯で縛られてしまった。身動きできないほどの厳しい拘束だが、しなやかな羊皮が肌に優しい。麻縄で縛られ慣れた裸身が優しさに一息つく。何となく中高年向けの縛りのような気がした。改めて自分の年齢を感じさせる。暗然とした気分になった。

「きれいよ、M。全身から官能が溢れてくるようよ。素晴らしいわ。口枷もしてみましょうよ」
華やいだ声で言った桜さんが別の段ボールから大きな穴の開いた皮帯を持ってきた。
「お願い、M。大きく口を開けてみて。そう、歯が溝にかかるまで口を開くの」
桜さんが直径四センチメートルほどの金属の輪を口に噛ます。裏側は硬質ゴムが貼ってあり、上下に歯が入る溝が切ってあった。金属の輪は黒革の猿轡の中央に取り付けてある。輪を口にくわえ終わると、猿轡から鼻の両側を通って延びた皮帯で額と後頭部、あごが拘束されてしまった。大きく口を開けて拘束する口枷からは驚愕した大きな目と落ち着きなく蠢く赤い舌しか見えない。もちろん発語することなどできはしない。唾さえ呑み込むのに苦労する。口中に空しく涎がたまった。

「仕上げに肛門調教具を装着してやろう。桜さん、持ってきておくれ」
若かったころの自分の肉体を思い描くような目をして、お米さんが興奮した声で言った。
「でも、股帯に空ける穴のサイズ用に借りた調教具はLサイズしかないわ。一番太い所が四センチメートルもある。Mのお尻に入らないかも知れない」
のんきに答えた桜さんの言葉がMを驚かせた。反射的に尻の穴がきゅっとすぼまる。言葉にならぬ声を上げ、身を震わせて拒絶した。だが、お菊さんの素っ気ない声がMを打ちのめす。
「大丈夫だ。Mの尻の穴はよく使い込んであるぞ。わしがこの目で見たんだから間違いはない」
一方的な答えに桜さんが感心した顔でうなずく。足早に壁際の棚に行って、二つの品を手にしてきた。一つは真ん中が括れたヒョウタンのような黒いゴム製の筒だ。筒の底から二本の細いゴムパイプと、バルブのついた小さなゴム鞠が二つぶら下がっている。もう一つはしっかりした造りの革のT字帯だった。お米さんが凶々しい黒い筒を受け取り、Mの目の前で無邪気そうに振った。

「これはわしらの製品ではないが良くできている。肛門調教ポンプとも呼ぶそうだ。二つ付いたゴム鞠のポンプを使い、筒を膨らますこともできるし浣腸もできるという優れ物だ。この責め具をわしらが作ったT字帯で股間に装着するんだ。昔からそうだが、人は皆すけべなものだ。Mも心行くまで悶えていいぞ。さあ後ろを向いて足を開き、尻を突き出せ。糞が出るほど尻の穴を広げないと肛門が裂けるから心しろよ」
口枷を噛まされたMに返事はできない。正面に立ったお米さんに小突かれて後ろを向き、腰を曲げて尻を突き出す。突然、尻を激痛が襲った。お米さんが合図もせず、マッサージもせずにゴムの筒をグリグリと肛門に押し込む。Mは涙を流しながら強く息んだ。ほんの少し失禁した途端にゴムの筒先の前方のくびれが肛門に入った。

「本当によく使い込んだ尻の穴だ。若いのに隅に置けぬ。立派な心掛けだぞ。女郎屋がなくなったことが残念でならない。これなら天下一品の身体だ」
嘆息したお米さんが、肛門調教ポンプを装着したT字帯でキリキリとウエストと股間を締め上げた。
「ついでに足枷と膝枷も試そう」
お梅さんが言って、両足首と膝を頑丈な革の枷で拘束した。一仕事終えた四人の老婆は顔を見合わせ、Mの周りを巡って舐めるような目で拘束振りを点検する。やがて一様に満足して思い思いにMの回りに座り込んだ。すけべの行き先にも果てはないと、Mは思う。どの顔にも歓喜と性的な高ぶりが溢れていた。黒い皮帯で拘束されて直立するMだけが悲惨だった。心行くまで悶えても良いと、いくら言われても無理な話だ。衆人環視の中で官能に悶えられるほどの修業は積んではいない。それに、見ている者は老婆だけだ。失礼ながらグロテスクな思いが先に立ち、官能どころではないのが本音だった。ただじっと不当な慰みの時間が終わるのを待つだけだった。時間は悔しいほどゆったりとしか流れないが、ようやく薄闇が部屋に訪れてきた。暗く沈んだ荒涼とした空間に白い裸身が浮き上がっている。妖艶な眺めだった。しばらくの沈黙の後、お菊さんが口を開く。

「桜さん、下に行ってすけべな金貸しを連れておいで。富士見荘に越して来たばかりの娘が素っ裸で縛られ、挨拶をしたがっていると訴えるんだ。這ってでも上がってくること請け合いだよ」
四人の老婆が高らかに笑った。Mは気が気ではない。今度はお爺さんまで来るという。悲惨な姿で挨拶をさせられるのだ。
「すぐ連れてくるわ」
少女のような華やいだ声を残して、七十二歳の桜さんが軽い身のこなしでドアを開けて二階に下りていった。やがて階下からステッキを突く音が聞こえてきた。音はゆっくり階段を上がり、廊下の端で少し途切れた。九十歳になる元堕胎医の高利貸しが息を整えているに違いないとMは思った。ノックの音が響き渡る。

「先生がお見えになりました」
中の者に触れる桜さんの若やいだ声が聞こえた。
「どうぞ。お待ちしていました」
三人の老婆が立ち上がり、お菊さんが気取った声で言ってドアを開けた。桜さんを従えた先生は小柄な老人だった。左足を微かに引きずり、ステッキを突いていたが、とても九十歳には見えない。表情も知性的だ。強欲な金貸しのイメージも堕胎医の暗さも感じさせない。リタイアして久しい小児科医といった風貌だった。しかし、ツルツルに禿げ上がったまん丸な頭部と、ぞろりと着こなした茶系の大島紬がどことなく怪しい雰囲気を醸し出している。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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